とらんぷ譚のレビュー・感想・評価
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悪事が転じて生き延びてしまった少年の数奇なライフタイム
う〜ん。上手い!
殆どギトリのモノローグだけで、ストーリーは進んでくが、あれよあれよとスクリューボール的に話は展開していき、あっという間にラストを迎える。オチも洒脱。
日本でいえば、まるで落語の小噺(に、しては全編トータル81分だけど)
ストーリーテリングの巧さと言ってしまえば、それまでだが、編集も絶妙なので(一人だけ毒キノコを食べず生き残った時のジャンプカットとか、髭を伸ばしていた青年時の主人公がシェーヴィングを終えると中年になってるとか)
主人公の回想が、全く途切れることなく、殆ど一本調子(フランス語特有)なのに、どういうわけか飽きさせず、半ば強制的に引き込まれ、最後まで目が離せない。
これは編集の冴えもあるが、やはりギトリ自身の語り口が巧みで、次から次へと展開していく数奇な人生に、一体どんなオチが?と、ホント落語のようだ。
元々、自分で書いた小説が原作となっているので勘所も良く分かっているのだろう。
オーソン・ウェルズも、これに影響を受けて『市民ケーン』を作ったらしいが、1936年に、こんなの作ってしまったら、そりゃ皆んな影響を受けるに決まってる。
しかし傑作中の傑作というのは、チョット言い過ぎ。
あのラストは勿論、オープニングでのタイトルやスタッフ紹介も洒脱ではあるが、本編の方に、特に目の醒めるようなショットがある訳でもない。
ルビッチ好きには、お薦めだが、トリュフォーやゴダールなどが絶賛しているからといって、ヌーヴェルヴァーグ的な斬新さは期待しない方がいい。
おフランスの人生観。
広島市映像文化ライブラリで。
6:4の画面で鑑賞。
1931年にレジオンドヌール勲章を授与されている、フランスを代表する劇作家・映画監督、サシャ・ギドリの4本目の監督作は、1936年の作品。トーキーで「トランプものがたり」と読ませています。
作家性の高さで知られているギドリらしい「フランス文学」を感じさせる、名脚本だった。
フランスの片田舎に住む12歳の少年ルイは12人の大家族。両親と最初の妻との間に出来た三人の子、今の妻の子四人、二人の妻の母親二人に聾唖の叔父。これが叔父が採って来た毒キノコを食して11人が死亡。最初の数分の出来事。
ルイは母親の兄弟に引き取られるが、直ぐに家を出てレストランのボーイ。その後ホテルのボーイ。ここで知り合ったロシアとルーマニアのハーフ美男子から、パリを訪れるニコライ2世への爆弾テロに引き摺り込まれそうになりますが、左手で書いた密告文書を警察に送り、難を逃れます。
映画のタッチは凄まじく軽くコミカル。かつテンポ早いです。置いてけぼりになりそうな位。
ルイはモナコに行き帰化。カジノのディーラーに。そこからは、フランス政府による帰化取り消し、徴兵と出兵、帰還。再びモナコで、泥棒彼女と愛し合って一回だけのスティング。 別の美女と組んでルーレットイカサマを企てるが失敗。トランプイカサマの道へ進んで財を成す。
カジノで戦地での命の恩人と再会するが、その恩人からギャンブルの味を教えられる。カジノでのイカサマとギャンブルは違うところがミソ。イカサマで築いた財産も屋敷もギャンブルで手放し。今は、その屋敷の前のカフェで回顧録を書いているルイ。
そのルイに屋敷への侵入を持ちかける、落ちぶれた老伯爵夫人に、いまの身分では出来ない。俺は刑事だ。で、FIN。
実像だけが勝負のトーキー。この内容で90分弱の詰め込み様ですから、恐ろしく高密度です。しかもフランス戯曲的な語りには集中力が必要。全く気を緩める時間はありません。大事件もケ・セラ・セラでトントン運ぶスピード感。ウィットとユーモアで埋め尽くされた語り。フランスがフランスである、いや、フランスはずっと前からフランスだったって事を証明する、まさに名品でした。
物凄く好き。叙勲に値するよ、これは。確かに。
良かった。とーーーーっても。
今年はフランスのレジェンド二人(マルケルとギドリ)の作品が立て続けに見れて、本当に幸せです。
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