死の花嫁

解説

「親友」「曲馬団の鬼」「道化役者」をものしたデンマークのA・W・サンドベルグ氏がドイツで作った映画で、ゾーフス・ミヒャエリス氏の原作を「東洋の秘密」と同じくノルベルト・ファルク氏とロベルト・リープマン氏の二人が共同脚色したもの。主役を演ずるのはマリア・ヤコビニ嬢の妹たるディオミラ・ヤコビニ嬢と「ファウスト」「道化役者」のエスタ・エクマン氏で「親友」「道化役者」のカリナ・ベル嬢、「パンドラの箱」「マタ・ハリ(1927)」のフリッツ・コルトナー氏、パウル・ヘンケルス氏等が助演している。(無声)

1929年製作/ドイツ
原題または英題:The Last Night Revolutions-hochzeit

ストーリー

西暦1793年、フランス、パリはジャコベン党とジロンド党の政権争奪で血で血を洗う騒擾の巷となっていた。これはその時代の物語である。一敗地にまみれたパリを追放されたジロンド党員の潜入を恐れて厳重にパリ城門を守っているジャコベン党の保民軍士官マーク・アロンの情ある計らいによりパリの富豪の娘アリアンヌは侍女一名を伴に郊外の別邸トリオンヴィユへと急ぐことが出来た。そこで彼女は目下墺匈国々境軍に投じているジロンド党員のエルンストと秘かに結婚式を挙げることになっていたのである。エルンストは旅人に変装し馬を飛ばして秘かにトリオンヴィユの邸に近づいたが運悪くジロンド党員の白い帽子を附近の農民のスパイに発見された。スパイはかくとジャコベン党本部へ報じたので保民軍司令官モンテルウ大佐は一隊の兵士を従えてすぐとトリオンヴィユに急ぎ、折しも結婚式を終えて祝いの食卓に就いている二人を襲った。エルンストは恐怖の余り花嫁のことなど一切関わず身を以て遁れたが、デンマーク附近を巡邏中のマーク・アロンの一隊に捕えられ再びトリオンヴィユに引戻され死刑を宣告されることになった。エルンストとアリアンヌが今しがた結婚したばかりと言うことを知ったマーク・アロンは憐れに思って司令官のモンテルウに頼み、エルンストが死刑になる朝の六時まで二人を一緒に置いてやることにした。然し、死の恐怖に捕えられたエルンストは残された最後の時間を静かに楽しもうとはしないで小児のように泣き喚めいていた。余りのことにアリアンヌはマーク・アロンを呼び入れ、何とかしてエルンストを慰めてくれるようにと頼んだが無駄であった。マーク・アロンの姿を見たエルンストは彼の足下に縋りついて如何なる恥しめに遇っても関はないから命だけは救ってくれと懇願する。初めてアリアンヌの姿を垣間見てから彼女を胸中深く愛するようになっていたマーク・アロンは彼女のために遂いに自分の外套をエルンストに与えて逃してやる。程経てから、然しこれは、モンテルウに発見された。彼の裏切りを知って憤慨したモンテルウはエルンストの代りにマーク・アロンを死刑に処するよう宣告を下す。この時になってアリアンヌは初めて如何なる犠牲によりエルンストが逃れたかを知った。彼女のマーク・アロンに対する感謝は何時の間にか愛に変って行った。二人は残された僅かの時間を恋人として静かに楽しんだ。朝は来た。死刑執行の時になった。マーク・アロンを弟のように愛していたモンテルウは流石に兵士達に射撃の号令を発することが出来ない。苦しい友人の心を知ったマーク・アロンは淋しい微笑と共に露台に進み出て自ら号令を発した。そして轟然たる一斉射撃の中にアリアンヌとともに倒れたのである。

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