世界のメロディー

解説

「伯林-大都会交響楽」の監督者としてまた「アクメッド王子の冒険」の協力者として我国にもその名を知られているワルター・ルットマン氏が監督に当った作品でハンブルグ・アメリカ汽船会社とトオピス社との共同製作に係る世界周遊映画である。ルットマン氏を助けてウォルフガング・ツェラー氏が伴奏作曲し、グイド・バギーヤ氏、ハインリヒ・ムッツェンベッヘル氏が総指揮している。(ドイツ最初のトーキー)

1929年製作/ドイツ
原題または英題:Melody of World Melodie der Welt

ストーリー

人間の生活の表現が互に類似していながら、同時に相異っていることから発生するドラマがこの映画の目的であり且つ形式である。二人の人間の平凡な日常の関係から世界中の全人類の相互関係が発展してゆくのである。男と女。マドロスとその恋人。船の出発が間近に迫っている。荷物を拵える。安全な陸地と最後の別れを惜しむ。その情景に交って波涛の叫び声、船のサイレン。さあ海外へ行くのだ。いよいよお別れだ。船のエンジンのリズムは人を容赦なく引摺って住みなれた日常の生活から、はるばると遠い国へ連れてゆく。そこでこのぼんやりした異国風景の中から世界のドラマティックな姿が浮び上って来る。それはその表面こそ色とりどりに違っているが、人間というテーマに結びついている点で統一されている。深い静かな祈りから急に賑やかな群衆の宗教的儀式が始まり、聖者の守護が自ずと全世界の軍隊の行進、戦争の興奮、戦争、その殺戮と破壊、に導いて行く。そのこわれたメロディーを子供が続ける。愛とスポーツとダンスと祭のざわめきの上にメロディーは昂まって行って壮大な人生の喧騒に変り、それがまた自然と労働の讃歌へ移ってゆく。サイレンの呼声が祝の夕を告げ知らせ、扉を開き、世界の人類を解放して人間性に目覚めさせる。これらの世界の出来事はすべてマドロスの眼に映ずる。彼は我々の世界のメロディーを親しく体験したのである。

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