ヴォルガ

解説

かつてエルモリエフ氏の下にあって「千一夜物語」等を作ったヴィアチェスラウ(ヴィクトル)・トゥールジャンスキー氏が「恋の凱歌」「プリンス・チャーミング」「大帝の密使」等の後、再びエルモリエフ氏の下にあって作った映画である。主役ステンカ・ラージンを演ずるのは「ジーグフリード」「クリームヒルトの復讐」でハーゲン・トロンエに扮したハンス・アダルベルト・シュレットウ氏であるが、それを助けて「流血軍団」「クオヴァディス」のリリアン・ホール・デイヴィス嬢、「テムペスト」「噂の女」のボリス・デ・ファス氏、「メトロポリス」のルドルフ・クライン・ロッゲ氏、等が出演している。(無声)

1928年製作/ドイツ
原題または英題:Wolga-Wolga

ストーリー

1660年の頃、といえばロシアの国民が自由を奪われ重税に喘ぎ花嫁を踏み躪られていた頃である。が、その時、ヴォルガの農民の友、被圧抑者の仲間として反抗の戦を雄々しくも続けたものにヴォルガ及びドンのコサック隊長ステンカ・ラージンがいた。そして彼を取り巻いて色々の伝説が生まれた。ラージンは勇敢な部下を率い色斑らな船に打乗り民衆の為に戦った。王侯はそのために彼を憎んだ。彼がウストラハンに碇泊すると聞き、露帝は貴族モロソフに命じて彼を討伐しようとした。が、臆病な貴族の策動、徒らにラージンの高笑いを買ったのみで、ラージンの乗る船はやがて碇をあげペルシャに向けてヴォルガを下った。風は南風、しずかなヴォルガの流れにコサックの歌が流れた。ペルシャにもラージンの勇ましい名は聞こえ渡っていた。そして彼等はペルシャの王宮にて丁重な歓待を受けた。が、その歓待の裏には陰謀があった。ペルシャ王は露帝の意を迎えようとして彼等を酔わし捕まえようとしたのである。が、その陰謀は中途にして破れ、花の宴には時ならぬ血が流れた。そして王宮は炎上した。焔の空はラージンの勝利と復讐とを物語っていた。が、この時からラージンの身は破滅に兆したのである。彼の股肱ワシカは、自分がペルシャの王女ツァイネブを船に奪ったにも拘らず、それをラージンが横取りして以来、心の内、穏やかではなかった。元来、海賊の掟は女をそれが例令肉親のものであれ船に伴う事を許さないのである。しかるにラージンは女の愛を船中に求め、その部下は暗い艫部屋で苦しんで働いているのである。加えるに水の欠乏があった。部下が不平を鳴らし始めた。ワシカは自分の陰謀が機熟するのを見てほくそ笑んだ。が、ワシカと部下との瞳に敵意の燃えるのを見た時にラージンは我身を抵当に投げ出した。彼はなお彼が一党の頭なる事を證する為に、恋を生贄とした。彼はツァイネブの心臓を短剣で刺し、その屍をヴォルガの流れに投じた。その後、ラージンの船が故国の港に碇を下ろした際、ワシカの裏切りによって呼び寄せられた貴族の一隊が船によって襲いかかった。多勢に無勢、ラージン党の苦闘悪闘も効なく、ヴォルガの流れは夕陽よりも紅く染まった。檣柱に固く結びつけられたラージンは、自分の船と共にヴォルガの底に沈んで行った。これが民衆と自由の友、勇ましいステンカ・ラージンの最後であった。ヴォルガの伝説は斯く伝える。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

映画レビュー募集中!

この作品にレビューはまだ投稿されていません。
皆さまのレビューをお待ちしています。
みんなに感想を伝えましょう!

レビューを書く