愛の坩堝
解説
「生恋死恋」から「霊魂の不滅」に至る迄僅か数本の映画しか紹介されて居ないが、スウェディッシュ・バイオグラフ社の映画は、何れも芸術味豊かな優れたもののみであった。之も前数作品同様ヴィクトル・シェーストレム氏の監督に成ったもので、スウェーデン中世紀の悲劇である。原作はヤルマール・ベルイマン氏。ベリイマン氏とシェーストレム氏とで脚色をした。イェニー・ハッセルキスト嬢とエスタ・エクマン氏が主役で、その他イワン・ヘドヴィスト氏や、「霊魂の不滅」でゲラーに扮したトーレ・スヴェンボルグ氏も出演する。無声。
1921年製作/スウェーデン
原題または英題:Love's Crucible Vem Domer?
ストーリー
之は愛と嫉妬、生命と死、青春と老衰、情火と犠牲、誘惑と宥怒の古きスウェーデンの物語である。ウルスラと云う乙女は親子程も年の違う彫刻家アントンと愛なき結婚をしたが、年若き愛人ベルトラムを慕って、此の恋許されずばむしろ死を選ばんものと、売薬坊主から毒薬を買おうとする。坊主は彼女の様子が変なので、毒と称して他の薬を売る。アントンは此の売薬坊主の密告を受けて、急いで帰宅して酒を求めた。その時ふとウルスラは買い求めた指環の毒を想い出し、之を酒に混じて夫に薦めた。之を鏡に写して見て居たアントンは、憤怒の極心臓麻痺を起こして絶命する。アントンに続いて入り来った人々は、彼女が夫を毒殺したものと疑って傍にあった盃を飲み乾して罪なきを証明せよと迫る。之を見たベルトラムは自ら之を飲んで彼女のために証明しようとした刹那、ウルスラは盃を奪って炉中に投じた。人々の疑いは益々深められて、憤怒の余り彼女を捕らえんとしたが、売薬坊主の証言で毒薬でなかった事が判って一時その場は収まったが、教会堂に掲げられた聖像の傷口から流れ出た血潮を見た僧侶は、必ずウルスラに罪ある予徴なりと信じ、火の神断によって彼女の潔白を知らんとする。ベルトラムは彼女を信じて、自ら彼女に代わって此の火の審判を受けん事を求める。彼がまさに火の壇上を渡ろうとする時、ウルスラはアントン死亡の夜の事ども思い浮かべ、自分が毒を盛った事をアントンに見られた事を知り、ベルトラムの身の上を気遣ってその場に走り来て、愛人の止むるもきかず火の壇を渡り、負傷なく無難に火の洗礼を受けて、青天白日の身とは成った。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ビクトル・シェストレム
- 脚色
- ヤルマール・ベルイマン
- ビクトル・シェストレム
- 原作
- ヤルマール・ベルイマン
- 撮影
- J・ジュリアス