ポストマスタア

解説

アレクサンドル・プーシュキンの『駅長』を映画化したもので、フョードル・オツェプ氏とワルキーナ氏が脚色し、ジェリヤブウジスキー氏と主役を演じている「ポリクシュカ」出演のイワン・モスクヴィン氏とが共同監督した純文芸映画で、ソビエト宣伝映画ではない。無声。

1926年製作/ソ連
原題または英題:The Post Master

ストーリー

老いたるセメヨン・ヴィリンはスモレンスクからサラエボへ通ずる郵便街道の寂しいある宿場の駅逓局長を実直に勤めていた。彼の妻は久しい以前に死んでしまったので、セメヨンにとっては娘ズーニャが唯一人の身内であり話相手であり、魂であり神であり、そして全てであった。ある時貴族の血を統いだ騎兵大尉ミンスキイが都路急ぐ途すがらこの宿場を過ぎ、美しいズーニャの姿に見惚れた。彼は若い貴族若い士官に有り勝ちな無責任な享楽主義者だった。そしてこの美女を手に入れる手段として仮病を使って駅長の家に滞在した。老父の愛撫に世間知らずに育った純なおぼこ娘を口説くことは難しくはなかった。彼の出立の日ズーニャは途中まで見送るとて同乗した。そして父の許には帰って来なかった。老いたるセメヨンは失われた宝玉を求めて遥る遥るサラエボへ旅立った。彼はミンスキイの家を漸く尋ね当てた。しかし、貴族の家の扉は貧しげな老人の為には開かれない。セメヨンは如何なる屈辱をも甘んじてひたすら娘に逢わんと試みたが全ては徒労に終わった。狂人のような老駅長の姿は再び故郷に現れた。そしてセメヨンは愛娘のまぼろしを追って大吹雪の夜悲しい最期を遂げた。やがて若い士官には田舎娘の素朴さが唯だ愚昧にのみ見えるようになった。飽きられて棄てられたズーニャは懐かしい父の抱擁と優しい愛撫を求めて故郷に帰って来た。そして寂しい墓標を見出した。

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