シップ

解説

「テオドラ」と並び称されるアンブロジオ大作品で、愛国の志士、熱情詩人ガブリエレ・ダヌンツィオ氏原作、同氏の子息ガブリエリノ・ダヌンツィオ氏の監督、主役は蛇の精の如き凄艶さを持つイダ・ルービンシタイン嬢である。アメリカに於てはやはりコールドウィン社の手により発売。(無声、序篇他二篇)

1921年製作/イタリア
原題または英題:The Ship

ストーリー

今よりおよそ千五百年の昔既ち暴虐なるアッチラ王世を去りてより百年を経た頃、ベネチアの町の人々は安んずる暇もなく又入り来りし蛮人の為に市街は焼かれ家財は掠奪され、遂に彼等は安全なるその境地を海上に求めたのであった。かくて故国を離れたる人々は潮満ちては潮干くとある入江の地に居を定め、新しき都の建設に力を尽したが、時の為政者オルソ・ファレドロはギリシャの民と刺を通じて人々の恨みを買い遂に位を退けられ、そのみか四人の子息と共に惨き刑罰に遭い身の自由をさえ失ってしまった。しかるにオルソの娘バシリオラは幸いにも海外にいた為、一人その責苦より免れる事を得た。美しい彼女はやがて故国に帰り来ったのであるが、己が父及び兄弟の哀れを止めし悲惨なる姿を見て深き驚愕と悲憤の情に打たれたのであった。かくて復讐の念遣る方なきバシリオラは折から外国より凱旋し、位に即きたる新しい為政者マルコ・ガルチコの前に於てその得意とする舞踊を舞い、彼の心を魅し去った。復讐の血に燃えたる彼女はなおも恩窮身に余るを利して為政者に強い、人々に対して暴政を加えしめ、密かに父及び兄弟の怨みを晴らして一人微笑むのであった。しかしながら武人たる為政者マルコが心の、やがては彼女より離れ去らん事を悟りしバシリオラは、更にマルコの弟たる大僧正セルジゥスの心を艶なるその容姿もて誘い寄せ、打ち続く乱舞の酒宴を催さしめ、さすが敬神の心深き町の人々を、今は全く汚わしき民と化せしめた。かく聖堂は潰され、神の威力地に堕ちたる中に、兄弟は浅間しくも妖女バシリオラが意を迎えんと相争い、遂にマルコはセルジゥスを己が剣の錆と斃した。しかしながら神は最後の勝利者である。かねてよりマルコが為に一孤島に流されて寂しき配所に流竄の身を嘆きつつも、何時かは来らん神の世を待ちつつありし兄弟の母エマは、やがて忠臣の助けにより迎い帰され、又今は深くも非業を悔ゆるマルコを始め町の人々は、彼等ベネチアの民の為に新しき自由の国を海に求むべく、そが唯一の城廓たる巨船「世界丸」を建設し始めたのである。海の彼方に望み溢れて、深き罪業を興国の殊勲に償わんと勇ましくも船に長たる為政者マルコはその行を共にせんと請う忠臣を伴い、アドリアの海遥かに自由の境地を求めんものと威武堂々と船を進めた。その首途の悲劇を飾る妖姫バシリオラの美しい死は、彼女が犯した恐しい罪の数々をもなお償って余りあったのである。人々の挙げる讃美の声に、神これを聖め給う巨船「世界丸」、新しき国を求めつつアドリアの波を截って行くのであった……。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

映画レビュー募集中!

この作品にレビューはまだ投稿されていません。
皆さまのレビューをお待ちしています。
みんなに感想を伝えましょう!

レビューを書く