野性の誘惑
劇場公開日:1956年12月8日
解説
北欧スウェーデンの大森林を背景に、野性味溢れる女性を中心とした異色ドラマ。ロシアの作家アレクサンドル・クウプリンの小説から「肉体の怒り」のジャック・コンパネーズが翻案し、女流脚本家クリスチアーヌ・アンベールと共同脚色、台詞は同じく「肉体の怒り」のポオル・アンドレオタが担当する。監督のアンドレ・ミシェルは四四年以来短篇専門(四七年ヴェニス映画祭で短篇賞を受賞)で、劇映画ではこれが第一作である。撮影は・「一日だけの天国」のマルセル・グリニョン、音楽はノルベール・グランベール。出演者は、「不良の掟」のマリナ・ヴラディを中心に、「港のマリイ」のニコール・クールセル、「ボルジア家の毒薬」のモーリス・ロネの他、スウェーデンの俳優たちで脇役を固めている。
1956年製作/フランス
原題または英題:La Sorciere
配給:東和
劇場公開日:1956年12月8日
ストーリー
若いフランス人技師ローラン(モーリス・ロネ)は、スウェーデン北部の土木工事場に派遣された。北欧の風土と人情に憧れを抱いて彼はやって来たが、工事現場は想像以上の寒村、住民は頑迷で迷信深かった。言葉に不自由なローランは何かと不便だ。土木事業の経営者で未亡人のクリスチナ(ニコール・クールセル)はフランス語を話したが、彼女は権高い婦人だった。ローランは狩と釣に孤独を紛らした。ある日、森の中にかけた罠を見回りに行った彼は、罠から子鹿を救い出す見なれぬ娘に出会う。粗末な服を着て裸足の娘は鹿のように逃げた。ローランは追いかけたが娘を見失い森に迷った。夕闇迫る頃、やっと沼沢地へ出たが、泥に足をとられ体が没して絶望となった。その時、一人の老婆が救いの綱を投げてくれた。それは魔法使いと呼ばれ村人から怖れられる老婆だった。そして例の野性の娘は老婆の孫娘イナ(マリナ・ヴラディ)と分った。ローランは介抱され村へ帰る。日ごろ尊大なクリスチナは接吻を以て彼を迎えた。このこと以来ローランは度々森を訪れイナと楽しい時を過した。一方クリスチナは若い技師に強くひかれる自分を抑えるため、夏休を終え首府の寄宿舎に戻る息子に付添って当分都会生活を送ろうと出発した。クリスチナの留守中、技師と野性の娘との仲は益々深まった。が、魔法使いの孫娘と親しむ技師に作業員たちは信頼と尊敬を失くして行った。しかしローランは挫けず、イナを何とか文明に馴染ませようと努めた。二人の噂で村が持切っている時クリスチナが帰って来た。彼女はローランにイナとの絶交を命じた。そんな事に迄干渉する女事業主に腹を立てたローランはイナと結婚すると断言した。だがイナは結婚を承知しなかった。結婚すると命がなくなるという。クリスチナは魔女二人を彼女の土地から追払うべく、一週間内に立退くよう言渡した。老婆もイナも哀願したが、嫉妬を交えたクリスチナは聞入れない。一方、ローランはイナに、決して悪魔に呪われた人間でないと結婚を説いた。イナもやっと承諾し、恐れていた教会へも行く決心をした。イナは平和を感じつつ教会を出て来た。と、それを村の女たちが取巻さ、打つ蹴るの乱暴を加えた。見かねたクリスチナが群衆を追払う隙にイナは逃れたが、一人が投げた石はイナの頭に当った。ばったり倒れた彼女は最後の力をしぼって森に向い進んだ。ローランが駈けつけた時、森の妖精は既に冷かった。無知愚昧の村人達の犠牲になって。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アンドレ・ミシェル
- 脚本
- ジャック・コンパネーズ
- 脚色
- ジャック・コンパネーズ
- クリスチアーヌ・アンベール
- 原作
- アレクサンドル・クウプリン
- 台詞
- ポール・アンドレオータ
- 撮影
- マルセル・グリニョン
- 音楽
- ノルベール・グランベール
受賞歴
第6回 ベルリン国際映画祭(1956年)
受賞
銀熊賞(芸術貢献賞) | アンドレ・ミシェル |
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