「タイトルは穴でも全く穴のない脱獄映画の傑作」穴(1960) シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルは穴でも全く穴のない脱獄映画の傑作
パリで実際に起きた脱獄事件を題材にした脱獄ものの傑作で、全編にわたり緊張感が途切れることのない監督のジャック・ベッケルの手腕に感服しました。五人の未決囚が雑居房の床板を剥がしコンクリートを砕いて地下水道から脱獄する極めてシンプルなお話しです。脱獄ものによくある、冷酷な刑務所長や看守も出てこないし、主人公達と対立する囚人も出てきません。とにかくひたすら、コンクリートを砕きセメントを崩し鉄格子を切断するシーンが延々と続くだけの展開なのに、画面から目が離せないのは、多くを語らない男たちの絆と目的に向かってのひたむきさに強い共感を感じるからです。こう言うお話は、さすが原作・脚色担当のジョゼ・ジョバンニの独断場と思ったら、彼自身が実行犯の一人との事で納得。役者では、実際に事件に関わったジャン・ケロディが、若い時のアンソニー・クインのような風貌で素人とは思えない達者ぶりです。獰猛な顔つきのミシェル・コンスタンタンも、いい役どころでした。
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