「価値ある作品」価値ある男 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
価値ある作品
三船敏郎の海外映画初主演となった1961年のメキシコ映画。
前々から非常に見たかった作品。理由は、三船敏郎のドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』のレビューに書いた通り。
三船敏郎生誕100年を記念して昨年パッケージ化され、見れるとはいやはや嬉しい。
メキシコのある村。ここでは年に一度の祭りの主催者“マヨルドーモ”が選ばれる。
主人公の貧農アニマス・トルハーノも“マヨルドーモ”になる事に執着するが、財力や人望がなければなれない。
彼は妻子を顧みず時に暴力を振り、酒やギャンブルに溺れ、神頼みに拘る村の鼻つまみ者…。
日本人がメキシコ人を演じるなんて違和感全くナシ。(だったら、今のハリウッド俳優にこそいちゃもん付けたい)
三船が全編スペイン語を覚え、熱演。
残念ながらその後現地の役者の吹替になったそうだが、粗野でギラギラとした圧倒的な存在感はやはりさすがのもの。
作品自体も高く評価され、その年の米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。
おそらく今のメキシコ人が見てもこの古く貧しい村のしきたりは興味深いだろうが、話自体は異文化だから…というほどでもない。
一人の男の転落と救済。
前述以外でも娘の逢い引き相手を刺し投獄され、そのくせ自分には愛人の娼婦が。妻が稼いだ金にも手を出し…最後まで言う必要もないだろう。
とことんつくづく、ダメ人間、どん底人生…。
ある時、一発逆転!
ひょんな事から大金を手に入れ、恩恵を受け、“マヨルドーモ”に選ばれる。
念願で何よりも彼にとって価値ある座だった“マヨルドーモ”。
しかし…。
思わぬ事態が起こる。
初めて自分の愚かさを知る。
自分は“マヨルドーモ”に選ばれる“価値ある男”なのか…?
自分にとって“価値ある存在”…。
それはずっと傍に居てくれたではないか。
その為に俺は全ての罪を背負い、改心する。
ずっとずっと見たいと思っていてやっと見れた、幻の作品。
だからそれだけでも、“価値ある作品”。