「全てを捨てて貫く愛の自己責任」恋人たち(1958) Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
全てを捨てて貫く愛の自己責任
公開当時、男女の恋愛動機が描かれていないと一部で批判を受けたルイ・マル監督の、恋愛至上主義とその自己責任を問うフランス映画。この作品の10年後にアメリカ映画「ジョンとメリー」、そしてその約10年後に日本映画「遠雷」があるが、映画表現の恋愛観で強引に判断すれば、日本映画はアメリカ映画と10年の隔たりがあり、フランス映画とは20年の開きがあったことを感じさせる。
ストーリーは単純明快で難しくない。今日の共感・共鳴の鑑賞とは次元を異にする映画表現美のための作品で、男女の恋愛について社会的な制裁の判断はなされていない。その潔さをどう観るかだけだ。物語の後のストーリーに現実がある。
月の光に浮かぶ女と男の甘美な情景が、ブラームスの弦楽六重奏曲アンダンテ・マ・モデラーテの流麗な旋律でさらに美しく、刹那的に描写される。女性として成熟したジャンヌ・モローの存在感が全てであり、彼女の美しさと意思の強さが作品の存在意義を保つ。彼女に捧げたルイ・マルの演出美を堪能する。
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