スパイ(1957)

解説

チェコ作家エゴン・ホストフスキー原作『深夜の患者』に材をとり「ピカソ・天才の秘密」のアンリ・ジョルジュ・クルーゾーが監督した、国際スパイ戦をめぐって現代の一面を描いた作品。クルーゾーと「悪魔のような女」での協力者ジェローム・ジェロニミが脚本・台詞を共同執筆。「眼には眼を」のクリスチャン・マトラが撮影を監督し、「ピカソ・天才の秘密」のジョルジュ・オーリックが音楽を、「ノートルダムのせむし男」のルネ・ルヌーが美術をそれぞれ担当した。出演者は「にがい勝利」のクルト・ユルゲンス、「最後の08/15」のO・E・ハッセ、シャンソン歌手でもあるジェラール・セティ、「歴史は女で作られる」のピーター・ユスティノフ、「悪魔のような女」のヴェラ・クルーゾー、「アスファルト・ジャングル」のサム・ジャフェ、「ロマンス・ライン」のポール・カーペンター、その他ガブリエル・ドルジア、ルイ・セニエ、ピエール・ラルケ、マーティタ・ハント、ジャン・ブロシャール等。製作ルイ・ド・マスール。

1957年製作/フランス
原題または英題:Les Espions

ストーリー

流行らぬパリ郊外の精神病院の院長マリク(ジェラール・セティ)は、贋の往診依頼で呼出され、米国戦争心理協会のハワード大佐(ポール・カーペンター)と称する男から、アレクス(クルト・ユルゲンス)という男を患者として秘密にかくまうことを頼まれ、病院再建費のための百万フランを代償に貰った。彼は国際的なある事情から身を隠す必要のある人物であり、某国側の手がこれを追っているのだという。翌朝マリクが起きると、いつの間にか病院には、今までの使用人が姿を消して新しい看護婦や二人の得体の知れぬ男が入りこんでいる。外に出てバーに行けば昨日と変った給仕がいて、彼がいつも飲む酒をついでくれ、病院にかえってみると、カミンスキー(ピーター・ユスティノフ)と名乗る髭の男やクーパー(サム・ジャフェ)という小男が診察を口実に何かをさぐりにくる。そしてその夜、黒眼鏡のアレクスが忽然と院内に入りこんできた。マリクは彼を一室に閉じこめた。明くる日から、病院とその周囲は正体不明の人物群のうごめく場所となった。唖然としているマリクを、おびきよせた、米国対仏特務班長だというクーパーは、事情を彼に説明した。部下のハワード大佐が連絡を断ち、謎の男アレクスを穏す工作をした。裏切りと思えるのでアレクスの正体を知りたい。写真を秘かに撮ってほしい。拒否しても君の周囲は我々によって固められていると。更にその夜マリクは、看護婦一味の話を立聞きして、アレクスが実は東ドイツから脱出した原子科学者フォーゲル博士なのを知った。ハワード大佐は東西いずれにも属さぬ人間的立場から、両陣営の追求より彼を隠したのだ。大佐の誠意を信じたマリクは病院の患者の写真をクーパーに渡して偽った。盗聴マイクをマリクの部屋にしかけたカミンスキー側某国陣営もこれを知り写真を要求した。しかし、この写真によりスパイの群は翌日からすっかり姿を消してしまった。ところが謎のアレクスはフォーゲル博士ではなかった。彼は、自分を囮にしてスパイ達をひきつけ、本物の博士を逃す大佐の計画失敗を語り、マリクの余計な工作を怒った。責任を感じたマリクは百万フランと交換に看護婦に案内させ、急を知らせに大佐を追った。大佐はクーパーとカミンスキー両者の追求に服毒しており、マリクだけにマルセイユからフォーゲルを逃す計画を教えて死んだ。マリクは一人駅に急ぎ列車中で博士(O・E・ハッセ)に会った。おびえる彼は、安価に製造可能で強力な自分の発明した原爆が、どちらかの陣営に渡る危険と苦悩を語った。しかし早くも両陣営の手は迫り、博士は車窓から鉄路に身を投じてしまった。マリクは病院にもどり、総てを警察に訴える決心をした。口がきけるようになった失語症患者リュシイ(ヴェラ・クルーゾー)が唯一の証人だ。その相談中、彼の部屋の電話のベルがけたたましく鴫った。そうだ、この部屋の会話は盗聴されている筈だった。不気味に鳴りつづけるベルに彼は凝然とたちすくんだ。

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