「品川心中の様に真暗な海の中に入って行って『FINE』」道(1954) マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
品川心中の様に真暗な海の中に入って行って『FINE』
我が親父が『一番好きだ』と曰っていた映画だ。ガキの頃、家族で見せられた。いつだったか、覚えていないが、母も一緒に見たと記憶する。〔その時の母はつまらないと言っていた。ザンパノの性格と親父が似ているとの事)勿論、テレビでの鑑賞。小学一年生(訂正 中二病の14歳でした)の時には白黒テレビがあったから、10歳以前だと思う。コマーシャルが無かったと思うので、旧国営放送だ。
さて、今回は『なんと、なんと』二回目の鑑賞。しかし、実に良く覚えていた。最後、品川心中の様に真暗な海の中に入って行って『FINE』と思っていた。そこが違った様だ。それと、彼らの関係を男女関係とは思っていなかった。男のダンディズムくらいに考えていた様だ。また、キじるしが悪人に見えた。
しかし、この年になって二回目を見て、その印象は大きく変わった。
傍らの愛する女性を助けられない男性の愚かさを見事に描いている。そして、何一つ反省無く、逃げお押してしまう。キリスト教に於ける人間の『贖罪』の様に感じた。キじるしのセリフは、今の社会にも求められている事だと思う。
僕とっては、二度目の鑑賞だが『禁じられた遊び』と同様に歴史に残る名作だと観じた。
追記 『日本では、N○○教育テレビで1971年11月23日の10:30〜12:19』との事。私は14歳のでした。謹んで訂正します。
日本の大監督が『この映画に影響を受けた』とのたまわっているが、全く逆だ。
この映画で『泣ける』と言う印象を持つのと同じだと今の私は思う。私は、泣けもしなけりゃ、笑いも無し。ザンパノに対する怒りがふつふつと湧いてくる。
マサシさん、共感ありがとうございます。
名画の素晴らしさは、様々な人生経験を経た多くの人の心に感動の涙を誘うも、同時に耐えがたい想いを刻み忘れ無くさせますね。それは時代が変わっても惹きつける魅力があると、普遍的な命を持つって歴史に遺ります。このフェリーニ作品は、男の狡さと女の健気さの悲劇を描いて、人間の孤独を神の視点から見詰め諭し、観る者にも救いを求めている様に感じます。善と悪のキリスト教的規範を、分かり易い映画の世界観で見事に表現したリアリズムの物語。男としてザンパノには全く共感はしませんが、何処かでザンパノと同じような罪を犯してはいないのか、歳と共に人生を振り返り、ふと頭を過ぎります。
イタリア映画は、戦後のロッセリーニやデ・シーカ、そしてヴィスコンティから、アントニオーニとフェリーニと、黄金時代が続き名作が数多く生まれました。その中でこの「道」は、イタリア映画を代表する名画であると思います。