「淡々と折り重ねられていく動作の美学」仁義(1970) ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々と折り重ねられていく動作の美学
メルヴィル作品の中でも「サムライ」と並んで人気の高い一作。この巨匠の描く世界はどこかブルーとグレーの合間のひんやりと冷たい温度感を持ち、一見すると人と人との関係性は無機質で血の通っていないように思えるけれど、その実、溜めに溜めたテンションが一瞬の動きや決断によって一気に解き放たれる構成がたまらない。
本作では運命のいたずらで巡り合った男と男が、ほとんど言葉も交わさぬまま助け合い、いつしか一蓮托生とばかりに大きなヤマへと挑むことになる。男たちの表情からは相変わらずほとんど感情が読み取れないし、彼ら俳優の演技がたっぷりとしたものにならぬよう、メルヴィル自身が編集であえて淡々としたタッチを作り出しているようにも思える。感情の代わりに本作のエンジンとなるのは、目的に向けて淡々と折り重ねられていく動作だ。工学的なまでに緻密に組み立てられていく物語に、一度はまりだすと止まらなくなる中毒性すら感じる。
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