ビッグ・シティのレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
家父長制が色濃いインド。
大都会コルカタの一家、夫(ハレン・チャタージー)は銀行員。
夫の実父母を引き取り、夫の妹も同居している。
銀行員としての給与だけでは生活が苦しい。
家計扶助のため、訪問販売員として妻(マドビ・ムカージー)も働きに出ることした。
妻の働きが軌道に乗り始めるも、夫は体面のため妻を辞職させようとする。
が、銀行が倒産して失業してしまう・・・
といった物語。
サタジット・レイ監督作品は今回が初鑑賞。
作品公開が相次いだ70~80年代、関西では上映機会が少なかったこともあるが、若い身としては食指が動かなかったことも確か。
家父長制一家を描く前半はあまり面白くないが、ドラマが進展するに従い、演出もキビキビしてくる。
特に、失業したことを恥じている夫や、家計扶助のために働きに出ていることを周囲に隠す妻、さらには教え子の元を訪ねて小遣いをせびる老父など、シリアスながらも喜劇的な側面が強調される。
最終的には夫婦ともに気概をみせる。
のだけれど、ちょっといい加減というか、ゾロっぺぇというか、楽天的というか、な結末。
で、これはこれで悪くないけれど、ちょっと取って付けたような感じがしないでもない。
強いられない決断としての女性の労働
1963年。サタジット・レイ監督。カルカッタで暮らす銀行員とその妻は一人息子を持ち、老いた父母、年の離れた夫の妹と同居してなんとか生活している。いよいよ生活に困って妻も働きに出ることにするが、老父には理解されないし、息子はぐずりだす。セールスレディをやり始めると、驚くほど優秀な業績を上げて家計を助ける妻だが、夫との関係が微妙になっていくと、なんと夫の銀行が倒産してしまう。一手に家計を支えることになる妻だが、、、という話。
これすばらしい。後期の小津かと見まがうばかりの庶民生活の描写。古い家父長制の意識と新しい都市の生活の対立、誤解からこじれる愛情。
いったんは家族のために仕事をやめようとした妻が、すんでのところで夫の失業を知って思いとどまったものの、それは働き甲斐や主体的な意思とは別の「強いられた決断」であり、そのあたりのもやもやが主演のマドビ・ムカージーの眉のあたりのこだわりとして表れている限り、物語は終わらない。理不尽な会社の決定に対して馘首を覚悟して反旗を翻し、無理を承知で夫に真情を涙ながらにうち明けて初めて、彼女の心は晴れやかになるのだ。「強いられない決断」として女性が働くこと。「チャルラータ」「臆病者」に共通するマドビ・ムカージーの怒りの表情もすばらしいが、最後に喜びの涙にむせる彼女の表情もすばらしい。
正にブルシット・ジョブだ!
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