野の白百合
解説
「土曜日の乙女」「情炎の美姫」のコリーヌ・グリフィス嬢の主演映画でウィリアム・ハールバット氏原作舞台劇から「愛すればこそ(1929)」のジョン・グッドリッチ氏が脚色し「ゴンドラの歌」「姫百合の花」のアレクサンダー・コルダ氏が監督し「恋の大分水嶺」「ゴンドラの歌」のリー・ガームス氏が撮影した。「黄金の世界へ」のラルフ・フォーブス氏、「医者の秘密」のジョン・ローダー氏、「妖怪屋敷」のイヴ・サザーン嬢、その他が出演している。
1930年製作/アメリカ
原題または英題:Lilies of The Field
ストーリー
ミルドレッド・ハーカーの良人ウォルター・ハーカーは妻を離婚して他の女と結婚するためミルドレッドに濡衣を着せて腹心の探偵と共謀し事件を法廷に持ち出す。審理の結果最愛の子供まで良人の手に奪われてミルドレッドは今更に味気なき人生を悲観し家を引き払って場末の安下宿に移転する。彼女はキャバレー・ウィンター・パレスの踊子となって生活の資を得、持って生れた美貌で人気の焦点となる。テッド・ウィリングは中でも熱心な憧憬者で彼女に真面目な恋心を抱いている。ミルドレッドは世を捨てた心でいながらもテッドの真情に動かされて去就に迷っている時、外遊から帰った宿夫が新妻を連れてホテルに宿泊している事を知る。ミルドレッドの心は忽ち子供を想う母としての愛に燃える。併し駈けつけた彼女に対しそこに待つものは冷たい失意だけだった。子供は母を忘れているのである。彼女は再び失意の底に突き落される。彼女の心は刹那の歓楽を求めテッドの純情にほだされる。そんなわけでテッドの恋を容れ彼と一緒に住むこととなった彼女は一見幸福そうであるが所詮彼女も古い女であった。正式の結婚を済まさぬテッドとの仲は彼女に一抹の暗影を投げている。ミルドレッドの家は毎日毎夜、歌い踊る聲の絶え間がない。だが彼女は言い知れぬ哀愁に襲われ人の子の母としての悲しみを覚えるのであった。或る日、例によって大勢が集って騒いでいる時突然電話のベルがけたたましく鳴る。ミルドレッドの胸を不吉な予感が通り過ぎる。電話は病院から彼女の子供の死を報じて来たのであった。激情に駆られて彼女は家を飛び出したが病院の名さへ知らない。無意識の中に我子を尋ねて街中を駈け廻った彼女は気がついて見ると留置所の中に自分自身を見出している。テッドは彼女の保釋に来る。彼女は彼の愛の深さを今こそ悟った。苦難の路を經たミルドレッドにもやがて春が廻り来るであろう。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アレクサンダー・コルダ
- 脚色
- ジョン・グッドリッチ
- 原作戯曲
- ウィリアム・ハールバット
- 撮影
- リー・ガームス