ラスト・モーメント

解説

「都会の哀愁」で初めて本邦に知られたポール・フェヨス氏が同映画製作以前、米国において最初に作った作品がこれである。原作、脚色、監督ことごとく氏自身が当り、「救いを求むる人々」に出演オット・マティーゼン氏が出演し、「救いを求むる人々」「黄金狂時代」のジョージア・ヘール嬢その他ルシル・ラ・ヴァーン嬢、アニエルカ・エルター嬢、イサベル・ラモア嬢、ヴィヴィアン・ウィストン嬢等が助演している。

1928年製作/アメリカ
原題または英題:The Last Moment

ストーリー

生命の最後の瞬間に、過去のすべての経験は、人の脳裏に蘇り来るという。これは投身自殺をくわだて死をはかった1人の男の脳裏に稲妻のごとき早さでひらめきすぎ去って行った彼が一生の思い出である。男の過去の物語--彼も幼時は父母の温い膝下に育った幸福な小児だった。18歳の誕生記念を迎えたころ彼の住む田舎町にサーカスの一団が訪れた。その花形娘にふと知り初めた恋ごころ、芸人風情の女と親しむことは父親の憤るところとなり、口論のはて、彼は家を後に、青雲の志を抱いて都へ上った。彼の希望というのは、舞台俳優として名を立てることだったが、その望みは容易に達せられぬばかりか、泊る家さえないみじめな有様だった。空腹と疲労の一夜を船つき場に明かしたこともあった。貨物船に忍び込んで発見され酷使されたこともあった。港の酒場に習い覚えた科白を朗読したこともあった。売春婦と淫らな戯れに時をすごしたこともあった。そしてついに俳優としての隠れた才能は、酒場に居合わせたその道の人間に認められ、脚光の前に立つこととなった。彼が放浪時代、自動車に倒されて病院に入った時、看護にあたった一女性もいまは彼の妻となった。だが、性格の違った2人の生活にはたちまちヒビが入った。仲たがいにつぐ離婚裁判。再び荒んだ生活がおとづれた。人妻との不倫な恋、決闘、自暴自棄的な賭けごと、そして彼の演技も荒んで行こうとした時、突如勃発したのは世界大戦だった。弾丸雨とちる戦場における戦友との死別、やがて平和克服となって以前の舞台生活にかえった時、はからずも行きあった1人の女性、彼はその女に永遠の慰めを見出したように感じた。幸福感にみたされた幾ケ月。だがそこにも不幸がひそかに待ち伏せていた。何物にも代えがたく愛していたその妻の突然の死はついに彼のすべての希望、生甲斐を完膚なきまでに踏みにじってしまった。人生は単なる舞台であって、人はそこにあやつられる傀儡にすぎないことを知った彼は暗い心を抱いて舞台衣装のまま河の水底に沈んで行った。

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