ユーモレスク(1920)

解説

1920年度の優秀作品として、フォトプレイ・マガジーン誌が金碑を贈った名篇で、ファニー・ハーストの原作になったニューヨークイースト・サイドの貧民窟を背景とせる母の愛を描ける物語である。「農場のレベッカ」「青年大尉キッド」などを脚色したフランセス・マリオンが脚色し、古く「神の鉄槌」や「巴里の花売」の監督者として知られているフランク・ボーゼージの監督になったもので、スターとしては「休なき魂」「緑車を馳る女」などでおなじみのアルマ・リューベンスが挙げられているが、実は母を演じるロシア生まれのヴェラ・ゴードン夫人と、パリに生まれサラー・ベルナール一座で訓練されたガストン・グラスの2人が主役である。本映画における驚くべき成功はこの2人をしてその後映画界の寵児たらしめた。母の愛を描いた作品として、「オーバー・ザ・ヒル」「母の愛」などとはまた異った味を出している。泣かせるシーンは殆どないが、温い、自我を忘れた母愛の表現は、観ていて実に温い気持ちを抱かせる。撮影的技術も頗る美しいものである。

1920年製作/アメリカ
原題または英題:Humoresque

ストーリー

「時」のオーケストラの広大無限の楽器にも似て、高き建物は青空に聳ゆ。ここニューヨークは歴史に表われしすべての文明の集まりである。その大きな都会の一隅にある猶太人町は、つきせぬ凱歌と悲劇の進行曲を反響して、甲走ったメロディーを挙げているが、この騒音の中にも母の愛こそは優しき調べを奏でている。この一廓に細やかな店を開いているアブラハム・カンターは、妻との間に5人の子供があった。その子供の中のレオンの誕生日に、父は彼を玩具店に連れて行って何か玩具を買ってやろうとした。レオンは4ドルのヴァイオリンが買いたくてたまらず父にせがむが高すぎるので買ってもらえず泣く泣く家へ帰って来た。母は平生自分の子の中から名音楽家を出して名声を博したいと願っていた折柄とて、大いに喜び貧しい財布の中からそのヴァイオリンを買ってレオンに与えた。母の祈願の翼に乗せられ、レオンは23歳の時彼の名声の絶頂に達し、伊太利皇帝の御前演奏をするほどの名音楽家となった。父母兄妹も彼のため名声と財産を克ち得たが、折から勃発した欧州大戦に、レオンは進んで参加した。別れの前夜彼は幼年時代の遊び友達ギナ・ギンスバーグと婚約した。待つ人々にとって永い苦しい数カ月は過ぎ、レオンの帰る報知が来たが、彼は左腕に負傷して、彼の生命たるヴァイオリンを持てない身となって帰って来た。ギナは悲しみのあまり卒倒した。レオンは思わず彼女を抱き上げた。そしてその時奇蹟的に左腕が自由に動いたので、彼は恐る恐るヴァイオリンを手にとってみた。果たせるかな微妙なる楽の音は再び彼に帰り来て、信仰に厚い母と愛するギナはレオンを擁して喜びに輝いたのである。

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