狼たちの午後のレビュー・感想・評価
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ほのぼの強盗劇の衝撃の結末
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
そこらあたりでコンビニ強盗やっているのと同じくらいに低能な犯罪者が行う銀行強盗は、当初から躓きまくる。顔も隠さず押し入り本名を呼びあい、強盗を始めた途端に仲間の一人がが怖くなって「やっぱり出来ない」と言って逃げ出すなんて、とんだ笑い話だ。しかも本当に起きた事件だそうだから、こんなことをいうのも失礼だがずいぶんとのんびりした強盗たちである。人質になった行員たちは最初は恐怖に引きつっていたが、その後はお喋りに花が咲いて、この大きな催し物をそれなりに楽しんでいる。このお粗末な強盗劇を笑い飛ばすための作品なのかと思ったほどに間抜けな雰囲気が続く。
だがそこにはこの催し物を見逃すまいと野次馬が押し掛け、事件の深刻さも考えずにただ楽しもうとする。報道機関も視聴者受けを狙った番組を作ろうとする。アル・パチーノが演じるソニーは、妻にも両親にも同性愛の相手にも理解されなかったり裏切られたりで、相棒のサルとも噛みあわず、この強盗の裏にある苦悩と孤独が浮き彫りにされる。そしてそんな彼自身も噛みあわない相棒を売ることになる。脱出が近づくにつれて命を失うかもしれないという予感が近づいてきて、最初の状況がすっかりと変化し緊迫感が高まる。
後半のその生死の境にいる雰囲気、特に最後の衝撃と、半日ですっかりとやつれたアル・パチーノの演技がなかなかのものだった。
狼というより犬です
1975年アメリカ映画。124分。今年33本目の作品。シドニー・ルメット監督が実際にNYであった銀行強盗を描いた作品で、主演は若かりしアル・パチーノ。
内容は;
1,三人の男が昼下がりに銀行強盗を実行する。
2,その内の一人は怖じ気ついて逃亡、二人で続行するが手際が悪く、逃亡前に警察とテレビ局に包囲される。
3,二人は人質を縦に、海外に逃亡する手配を警察に要求する。
銀行強盗ものの作品ではお馴染みの展開です。では、何がこのようなお馴染みの展開に異色を与えているかというと、銀行強盗をした二人がまったくのド素人で、しかも非情になりきれないところ。
さらに物語が展開していくに従って、社会派ルメット監督が焦点を当てているのがメディア化した世の中の脅威であることが伝わってきます。
これは今から30年以上前に作られた作品。この点を踏まえて観ると、メディアの媒体は違えど今の時代は30年前と人間の性質はやはり大して変わっていないのだな、くらいのことは思いました。
ルメット監督の作品を観るといつも感じるのですが、他の作品で劇的に描かれているドラマというのは実はそれほど劇的ではなく、実際はもっと平凡なのであろうという「凡庸さ」。そして、その凡庸さが息苦しく、ある意味怖い。毎度のようにこの人の映画は、結末後に心を無重力空間に置き去りにしてくる。
滑舌さこそがこの監督さんが対象とする敵なのかも知れません。
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