夢想の犯罪

解説

「ホテル・インピリアル」「暗黒街」「最後の命令」等の撮影者として知名なるバート・グレノン氏が監督としてエフ・ピー・オー社に招かれてものした処女作品で、ユダヤ文学者として著名なイスラエル・ザングウィル氏作の小説をエフ・ピー・オー副社長ウウィリアム・ルバロン氏自ら映画的に改作し更にエワート・アダムソン氏が台本を製作した。主役は「暗黒街」「鉄条網」「忘れられた顔(1928)」のクライヴ・ブルック氏が勤め、「他言は御無用」「ウインダミア夫人の扇」のアイリーン・リッチ嬢を始め、「メリー・ウイドー(1925)」「猫とカナリア」のタリー・マーシャル氏、「岡惚れハリー」「乱射乱戦」のグラディス・マッコネル嬢、エセル・ウェールス嬢、キャロル・ナイ氏、エドモンド・ブリーズ氏等が共演している。

1928年製作/アメリカ
原題または英題:The Perfect Crime

ストーリー

ロンドンで名探偵といわれる犯罪学者のチャールズ・ベンソン博士は警察界から引退したが、彼を失っては手も足も出ないことを知るウィルモット警部は、ジョーンズ刑事と同道してベンソンを訪ね復職を懇請したがその決心は遂に揺るがすべくもなかった。その時ジョーンズはベンソンが犯罪を行ったら必ず完全な犯罪を行って犯跡を残さぬに相違ないと言った。それはベンソンの心を動かした。ドゥ・クィンシーの「芸術としての殺人」を愛読する犯罪学者は果して完全な犯罪があり得るだろうかと考えに沈んだ。彼の貸家にフリスビーという男が住んでいたが、この男は妻を虐待するので嫌われ者だったが、その夜彼は家賃を届けに来た時歯痛に悩んでいた。ベンソンは痛み止めの薬といって眠り薬を与え寝室を厳重に戸締りして寝よと注意した。翌朝未明フリスビー夫人は良人が起床しないと告げに来た。ベンソンは夫人と共に扉を押し破った。フリスビーは剃刀で喉を切られて死んだ。不可解な事件として新聞は書き立てた。ベンソンにはステラという婚約者があったが彼は彼が探偵を辞めない限り交際しないといって遠ざかっていたが、彼が引退したことを知って訪ねて来た。別れてはいても愛し合っている二人は来るべき結婚生活の幸福を夢見て楽しい幾日かを過ごした。一方フリスビー事件は探査の結果以前フリスビーと同居していたトレヴァーという和解男が下手人として逮捕された。ベンソンは公判廷に傍聴した。トレヴァーは犯行を徹頭徹尾否定したが状況は彼が有罪らしいことを示し遂に彼は死刑を宣告された。良人の無罪を信じるトレヴァー夫人はベンソンを訪ねて真犯人を捕えて良人を釈放させてくれと懇願した。ベンソンは拒絶したがステラも口を添えて頼むので承諾した。彼はウィルモット警部を現場に招いてフリスビーはベンソンとフリスビーの妻とが扉を破って入る迄は死んでいなかったことを証明した。トレヴァーは直ぐに放免されたがベンソンは自ら頭蓋骨に赴かねばならぬ。と、瞑想から醒めたベンソンは完全な犯罪はあり得ないとノートに記したのである。

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