3つの生霊

解説

昨年ニューヨーク劇界に好評を得たフレデリック・S・アイシャム作の舞台劇を「踊り狂いて」「浮世離れて」「愛する権利(1920)」などと同様ウィーダ・ベルジェールが脚色しジョージ・フィッツモーリスが監督したミステリー・コメディーである。主役はノーマン・ケリー、シリル・チャドウィック、エドモンド・グールディングで、アンナ・Q・ニルソンも一寸出る。ロンドンを背景にした譚りで事実同地に出張して撮影されたものである。

1922年製作/アメリカ
原題または英題:Three Live Ghost

ストーリー

休戦条約が結ばれた夜、和蘭の船に乗って密航して英国に帰って来た3人の戦友があった。彼らは3人ともすでに故国においては死を伝えられていたが、実は独軍の捕虜となっていたのを脱走して来たのである。しかしその中の1人米人ビリーは恋の粉擾から殺人の嫌疑を受けるし、ロンドン児のジミーは酒飲みの母親がすでに彼の死の誤報によって得た保険金を飲んでしまった後だし、立派な素性を持ったもう1人の英人は弾傷によってすべての記憶を失って己が前身も知らず唯2人の仲間からスプーフィーと呼ばれるみじめな有様であった。かくて運命は3人に依然死んだという噂通り暮らすのを得策とする立場を与え、3人の生きた幽霊を作った。彼らはロンドンも下等なある貧民窟なるジミーの家にとにかく隠れ棲んでいたが、その中に酒飲みの彼の母が米人ビリーの懸賞つき探索広告を発見しまた一飲みできると密告を企てた。一方無意識に他人の物を持ち出す病のスプーフィーは街を歩いて広壮な一邸宅の美に打たれまたまた病気を発作して、無意識にその家の衣服を纏い宝石を失敬し赤ん坊まで連れてジミーの家へ帰って来た。折から酒飲み婆さんの懸賞米人逮捕の通知により臨検した警官は目下ロンドン中を騒がしている一公爵家の宝石と赤ん坊紛失事件の犯人を得て婆さんの懸賞金どころではなくなった。ところが宝石と赤ん坊の真偽を見極めに来た公爵夫人は、案外にもそのところに見すぼらしい当の犯人、否死んだと思った夫の姿を見い出して狂喜した。スプーフィーは正気に返って始めて自分の家宝と愛児を盗んだことを知った。婆さんの飲代、米人ビリーの探索広告も実証を握った山を彼に告げん為の優しい心盡しであった。かくして英国貴族と米国紳士はその後も親切者のロンドン児身分低いジミー・ガビンスの恩を忘れず3人は永く隔てない旧戦友として暮らした。

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