慕情(1955)のレビュー・感想・評価
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甘く切ない、たくさんの輝き
Blu-rayで鑑賞(吹替)。
香港を舞台に、運命のいたずらで巡り合った男女の悲恋を情感たっぷりに描いた恋愛映画の珠玉の名編。邦題は、原題の持つ意味を「慕情」の二文字に集約していて見事だと思う。
なんて素敵な映画だろう。観るよう勧めてくれた父に感謝したい。人生を輝かしめる愛の素晴らしさと、悲しくも美しいラストに涙が溢れた。主題歌も凄まじい余韻を齎してくれた。
今はなき香港を偲ぶ
今のような高層ビルはないが、空撮による香港らしき風景が出て、あの有名なメロディーが流れる冒頭のシーンはこの映画で気にいっているシーンの一つだ。英国領香港 1949年と字幕が出て、地上では救急車が走って物語が始まる。
今回この映画を再見したのは、デモで混沌としている最近の香港を見るにつけ、なぜか昔の香港を見たくなったからだ。
この映画を最初に見たときは、よくある古典的ラブロマンスの傑作であると思ったが、今回改めて見ると、また違った感動を覚えた。結末を知っているので、2人のアツアツぶりがかえって切なく感じてしまった。
また、 最初に見たときは、 ウィリアム・ホールデンが朝鮮動乱の取材で殉職してしまうのは、ある意味反戦映画でもあると思っていたが、今回は同時に反共映画であるとも気づいた。主人公の父は国民党で共産党軍に殺されたこと、毎日多くの中国人が共産党から逃れて本土から香港に難民として渡ってくること、 重慶に住む妹のところに行ってみると、共産党支配下では自由にパスポートが取得できず外国に行けないこと等。
あと、貨幣価値の差が著しかったこともわかった。本国で1人のメイトを雇うお金てこちらでは10人雇える。そのうち15人でも雇えるようになると言うセリフがあった。また、夫の治療費のために「お金はありませんがこの子売ります」と言っていた。当時は人身売買は珍しくなかったのだろうか?
ジェニファー・ジョーンズは、ほとんどチャイナドレスであったが、当時の香港の女性はそれが普通だったのであろうか?白衣を脱いだ下にチャイナドレスを着ていたが、ちょっとサプライズ感があった。
数年前に香港、マカオに行った時、レストランや売店以外ではめったにチャイナドレスを着た女性を見る事はなかったのだが。
真水みたいな映画
原作の小説は立派なんでしょうが、映画はハイハイこの小説映像にしときましたよ、ってところ。わかりやすくいえば、吉永君や山口君を持ってきて有名な観光地を舞台にした大衆向け文芸作品のハリウッド版です。原作では国籍問題が主題みたいですが、脚色は恐らく原作のセリフをなぞってるだけ、演出も筋を追ってるだけ、ありきたりのヨロメキが一丁上がりです。エキゾチックな香港に、有名な男女を主演に持ってきてるから当時は随分受けたらしいですけど、ドラマ的なワクワク感や盛り上がりが1ミリもないですね。
そんなに長くないから一応最後まで観ましたけど、毒にも薬にもならない真水みたいな映画。オマケしても2点がせいぜいですが、香港の映像は資料的な価値が高いので2点半にしときます。
名作と言われたけど
中国に向かう旅客機には中華民国国旗、まだ国民党政権。でも共産党が強くなっていて、難民も多く、一方で香港の同僚医師のように新国家建設を夢みる人も。朝鮮は戦争中、マカオもポルトガル語の看板。そんな時代を背景にドラマが展開する。
ドラマ自体に面白みはないが、ジェニファー・ジョーンズの美しさと名主題歌は残る。彼女のメーキャップ、眉の濃さは意志の強さを感じさせ似合っている感じ。加えて、セリフが洒落ていて、映画脚本に質の高さを求めた時代を感じさせる。
名曲に隠された都合の良い恋
1949年香港。ジェニファージョーンズ扮する女医ハンスーインは、パーティーでウイリアムホールデン扮する特派員マークエリオットと知り合った。マークは早速ハンに電話して誘い出した。ふたりは海辺で泳いだりもしたがハンは恋に落ちるつもりはなかった。だが、明日もと逢ううちにハンも徐々に心を開いていった。ハンはマークに妹のいる重慶へ行き頭を冷やしたいと言った。しかし、マークは重慶まで押しかけ、離婚するから結婚してくれと言った。叔父に相談したが、中国人が外人と結婚する事に余り良い返事はなかった。ハンは、マークのおかげでキラキラしていた。果たしてハンは離婚したマークと結婚出来るのか? 中国の壁は厳しかったね。テーマ曲は名曲なれど、結局のところ愛に芽生えた都合の良い愛人かな。
理性と恋心の狭間で揺れ動くジェニファー・ジョーンズの艶やかな演技と名曲が響き合う
ベルギーと中国のハーフの女性医師ハン・スーインがイギリス人イアン・モリソンとの不倫関係を記した自伝を原作にした、1950年代ハリウッド映画を代表する恋愛映画。作品の出来は、残念ながら同年のデヴィット・リーンの「旅情」に遥かに及ばないものの、第二次世界大戦後のイギリス領香港の実状が垣間見られるところと、主演ジェニファー・ジョーンズの素晴らしい演技が貴重だ。スーインの娘を養女に変え、モリソンをアメリカ人特派員マーク・エリオットにした映画の設定から、ジョン・パトリックの脚本に見られる恋愛情緒を優先したストーリー構成は、二大スター共演のハリウッド映画の本流にある。サイレント映画時代から活躍するヘンリー・キング監督の熟練の演出と、その甘美さを体現して魅せるジョーンズの繊細で豊かな表現力。色鮮やかでタイトなチャイナドレスを着こなしたスタイルの美しさと、理性と恋心の狭間で揺れ動く女性心理の艶やかな感情表現が、まさに演技派スターの輝きを放つ。そして何より、サミー・フェイン作曲の主題歌”Love is a Many-Splendored Thing"(原題)が全編を覆い、ジョーンズの切ない女心と響き合う。対してウィリアム・ホールデンは、可もなく不可もなしの存在で印象が薄い。デ・シーカ監督の「終着駅」に次ぐジェニファー・ジョーンズの名演と音楽がすべての映画だと云えるだろう。
ただ今回46年振りに再見し改めて関心を持ったのは、中国国民党の将校だった夫を国共内戦で失い、愛する人を朝鮮戦争で奪われる戦争犠牲者ハン・スーインの過酷さである。父の故郷の重慶に住む親族は、大地主を窺わせる上流階級の生活様式を構えていて、スーインに中国人としての誇りを忘れないよう願っている。しかし、農地解放などの政策で貧しい農民の支持を受ける中国共産党が勝利し、未来は混沌としていた。そんな状況で朝鮮内乱が勃発、国共内戦ではアメリカの介入が混迷したが、ついに朝鮮半島で中国共産党軍とアメリカ軍が戦う羽目になる。戦後復興に国民一丸となった日本とは違い、犠牲者175万人の国共内戦と同300万人の朝鮮戦争が、その後70年経っても負の遺産として中国と朝鮮を今も苦しめ、国際問題の火種を抱えている。他国との戦争根絶以上に、国内の安寧が如何に大切かを教示するものだ。
劇中では、来世では性が変わるとエリオットに言われたハン・スーインが、(男にはならない、あなたに女の幸せを教わったもの)と答える。そんな甘い言葉を語れるように、”違う国には生まれたくない、幸せな人生を送れたこの国にまた生まれたい”と思えるような国にみんなが努力出来ればいいのだが。
北京の月は大きい!
名曲♪このテーマ曲が全てのように思えるほど、ストーリーを追いかけるのがしんどい。香港から重慶、マカオと行ったり来たりで、必ず香港の病院や港の見える名所、丘の上の木に戻ってくる。
結婚したいと家族に紹介までしたのに、奥さんが離婚してくれない。中国に戻ると中国共産党に殺されるという理由で中国には帰りたくないハン・スーイン。最終的にはパスポートも切れるとかの悲劇。
国共内戦が激化し、香港には1日3千人が難民としてやってきていたという時代背景や、朝鮮戦争が勃発して、従軍記者としてソウルに向かったマーク・エリオット。といった美しい恋愛劇の裏には恐ろしい戦争が起こっていたという事実がつらい。中国近現代史の勉強になること間違いなしだ。
中国人という事実やハーフである現実、そしてアイデンティティに悩む中での恋愛。アメリカに亡命するのが手っ取り早かったと思うのですが、やはり患者を置いていくわけにはいかないという医師の使命も感じられる。今まで数回鑑賞してるのですが、どうも音楽とセクシーなチャイナ服しか印象に残らない。爆弾とティーカップの切り替えシーンは悲しいけど良かった。
反共思想映画だった!
何度か観た映画だったが
NHKのBS放送を機に再鑑賞。
新たにこの映画は随分と反共思想に基づいた
作品でもあると認識。
この映画では、香港が共産主義支配からの
避難場所として機能していた時代を
映し出していたが、
現代の香港は既にその機能も
失われているという意味では、
隔世の感を禁じ得ないが、
逆に現代にも繋がっている作品とも
言えそうである。
切ない愛の物語
香港でのとある2人のせつない愛の物語。 「神は僕たちに優しい
神に不公平も公平もない
2人の光り輝くものを僕たちは失っていない」
まずこのポスター、パンイチじゃないシーンにすればよかったのにって、思ったけれど、これって逆にいえば、全身全霊彼女を愛してるって意味になりそうじゃない?
そして、アルフレッドニューマンの音楽が最高。
スーインとマーク、切なすぎる本当に。何通ものお手紙、でも、うまくいかないってみんなに言われ続けても愛し続けた、またその結果が切ない運命だったという。。。裏切られてないけど裏切られたような。。でも、心の中ではずっとつながっている。彼らが戸籍として繋がることができなかった、目に見えるものとしては、繋がれてないけれど、本人の心の中では強い糸で結ばれている。2人の愛を🦋が表していた。ちょうちょがたくさん出てきたのが印象的だしちょうちょが2人の愛を表しているのも素敵。
自伝の映画化らしい
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:65点|ビジュアル:65点|音楽:75点 )
香港の浅水湾に行ったときに、ここが映画「慕情」の舞台になったのだと観光案内書に書いてあった。当時まだこの映画の名前をなんとなく知っている程度でよくわからなかったが、でもそれでこの映画に俄然興味が出ていつか観てみようと思った。
ウィキペディアによると「ベルギー人と中国人の血を引くハン・スーインの自伝をもとに映画化された」のだそうだ。だから基本的な部分は現実の話に基づいているのだろう。だがジェニファー・ジョーンズ演じる主人公のハン・スーインとその学生時代の友人の二人は欧州と中国の混血という設定だが、全くそのように見えず白人そのものなのが気になる。その当時のハリウッドでは適当な混血の女優がいなかったのだろう。また当時の白人とアジア人との間にある差別や社会的な隔たりの描き方は直接的ではなくて生ぬるい。現代の映画ならばもっとはっきり描写するのだろうが、この程度では当時の社会情勢を理解し辛い。
それでも二人の育む愛の行方が切なくてその成り行きに魅かれた。自伝だということならば猶更である。制作年代の古さゆえの欠点もあるが、彼女の心の動きに十分共感できた。
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