テムペスト(1928)

解説

「マノン・レスコオ」に次ぐジョン・バリモア氏主演の映画で、「雀」等を脚色した映画界古参の作家C・ガードナー・サリヴァン氏が自らオリジナル・ストリーを立て、台本を執筆したものにより、「デパート娘大学」「ロイドの福の神」等と同じくサム・テイラー氏が監督したものである。バリモアー氏の相手役は、「ファウスト」出演のカミラ・ホルン嬢が渡米後第一回出演として務め、2人を助けて「ソレルとその子」「美人国二人行脚」のルイス・ウォルハイム氏が重要なる役を演ずるほか、「結婚行進曲」のジョージ・フォーセット氏、ポリス・デ・ファス氏、ウルリッヒ・ハウプト氏、等も出演している。因にシェークスピアの戯曲に同名のものがあるが、この映画の映画化では全然ない。

1928年製作/アメリカ
原題または英題:Tempest

ストーリー

ロシアとオーストリーとの国境近くヴォリンスクの守備隊町がある。時、未だヨローッパ大戦勃発の前、1914年龍騎兵軍曹イワン・マルコフは、その精励抜群の廉により将軍のおぼえ芽出度く、小尉に抜擢された。日頃イワンは同僚の受けもいいこととて人々一同がそれを祝した内でも、わけても莫逆の友ブルバは我がことのように喜んだ。これよりさき、イワンは将軍の息女タマーラを知った。タマーラはこの龍騎兵一同の仰ぎ見る花であった。イワンもこの例にもれなかった。しかし、彼は身が軍曹であることを思い、またタマーラに許嫁のあることを知って、募る情を制していた。が、今、彼は小尉となった。彼が未来に稍々光りを認め始めた時、偶々招かれたのはタマーラの誕生日の祝宴であった。彼は父将軍にすすめられて、彼女を相手に踊ったが、冷酷な許婚の大尉の眼ざしを身に浴びると、彼は再び己れに立ち返った。そして酒を呑んでは髭を散じようとした。イワンは酒に酔った。彼はタマーラの寝室に入って行った。そしてそこで彼は酔い伏してしまった。これがタマーラ等に発見され、彼はその分を忘れた振る舞いにより、その等級を墜され、営為監獄に送られる身となり果てた。石の囚屋に長い陰惨な、暗湾たる日が続いた。時にヨーロッパに大戦が巻き起こった。彼は鉄の窓から将軍や僚友の出征して行く姿を見た。その後、また日が経って行った。そして再び冬がきて、雪が降り、嵐が人々を襲った。ロシヤは次々と敗北した。この敗報に激した人民は国を挙げて敗軍の将を呪い、その家族を殺し、あるいは捉へた。イワンはこの時、敗残の将士を裁く判事の1人に推されたのであった。1日、彼は己れが裁きの前に夢にも忘れぬ恋人タマーラの姿を見出した。彼はタマーラを獄屋に訪れて恋を語った。タマーラも彼への思慕を打ち明けた。イワンの心は動いた。彼はタマーラを救わねばならないと思った。しかも彼はタマーラの父将軍の死に際会した。この惨虐に憤ったイワンは決然裁判長と争った。彼はついに相手を倒した。そして彼はブルバを力添へとしつつ、タマーラを乗せて橇を走らせた。嵐の吹きまくっているロシアを背後にして、輝ける未来をめざして、オーストリーの国境目指して、まっしぐらに。

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