草原の野獣のレビュー・感想・評価
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誰かリメイク作ってくれ
1958年にこれだけ多角度から見れる西部劇を作っていた事に驚き。銃を玩具の様に扱う兄とネイティヴアメリカンに偏見持たず丸腰の弟。父親は開拓者であり牧場主という昔気質の立場からかマッチョであり、兄弟に自分を手本にしてほしいと男手だけで育てている。僕は年齢からも父親の葛藤は痛いほど理解出来るが、年代違えばまた違った感想も出てくるだろう。
そしてこれって現代アメリカの銃に対する社会問題そのまま。もっと一人一人に焦点を当てて、3時間くらいの作品で見てみたい。 因みにラストはじわ〜っとくる。
(95年以降モンタナアイダホワイオミング辺りを何度かドライブ旅行したが、馬に乗り牧童を生業とし銃も使う人達を目にした時は、まるで映画の世界だと感動したものだ)
西部を生きる父と息子の決闘
タランティーノ作の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(略して、ワンハリというらしい)の公開記念として、タランティーノがセレクトした作品の一つ。
自分の力で未開拓地を開いてきた大牧場主のリー・ハケットには、二人の息子がいたが、兄エドは自分に似ているものの、粗暴でトラブルを起こしてばかり。(気にくわなかったらすぐに銃を放つ)一方、弟デイビーはガンマンの素質は全くない、臆病なんだけれども心の優しい青年。ある事件をきっかけに、人を殺めてしまったエドは父親の工作によって救われるが、次々と波乱を起こし、父親リーもエドを庇いきれなくなって最後は……という話。
西部劇といっても、悪と正義の決闘というものではなく、父親と息子の確執を描いた悲劇なので、ヒューマンドラマ要素の強い西部劇なのかもしれません。
父親を演じていたヴァン・ヘフリンという俳優さん、好演でした。
ラスト、最愛の息子を失って、泣き崩れ、次男と婦人が手を差し出すシーンが印象的。
思わず、涙が出てしまいました。
白馬を捕獲するため、エドとクリーの兄ポールが馬に乗って競争するシーンが迫力ありました。
タランティーノ企画がなかったら、観ることもなかった映画かもしれません。なかなか、見応えがあり、自分にとっては、拾い物でした。
現代でも通用するほどの脚本
総合70点 ( ストーリー:80点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
西部劇といえば、町を牛耳る悪の牧場主がいて、主人公がそれと対決するというのが定番。だがこの物語は、なんと町を牛耳る悪の牧場主側が主人公で、それが脇役である正しい者たちと新しい時代の秩序に対決を挑まれる。それもただ銃で撃ち合いをするというのではなくて、20世紀を迎える直前の社会で、法での対決であったり生き方での対立であったりする。その逆転の発想が独特でまず面白かった。
牧場の父親は、法の支配など無い時代に力だけを頼りに大地を切り開き、先住民や侵入者と戦い、町を作りあげたという自負がある。だから、力に頼り思うとおりに強引に指導力を発揮する。先住民に嫌悪感を持ち、多少荒々しくても自分の力で自分のやりたいことを成し遂げる。それで全てを成功させて今の地位を築いたのだから、例え力よりも秩序で物事を治める時代がやってきたとしても、今さら急に考え方は変えられない。
そんな男の息子達は、一人は父親そっくりで昔ながらの力で自分の望みを強引に手に入れようとし、もう一人は新しい時代の価値観をもって生きようとする。そのような世代格差と価値観の差が露わになっていく過程が、厳しくもありつつもアメリカの歴史の移り変わりを映し出している。1958年にこれだけの話を描けたのはたいしたものだと思う。
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