エル・スールのレビュー・感想・評価
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過去の心の傷が静寂な雰囲気の中で描かれる
総合:70点
ストーリー: 65
キャスト: 75
演出: 80
ビジュアル: 75
音楽: 70
独特の静けさと孤独と寂しさが全体に漂う。背景は美しいが、それはいつも冬の空気のように冷たい。その中で人々の、特に父親の心にある過去の傷が少女の目からぼんやりと描かれる。同じビクトル・エリセ監督の前作「ミツバチのささやき」と似た雰囲気だが、前作は中盤まで日常生活の描写に殆どの時間が割かれて、物語がはっきりせずに少々不満が残った。今作は純文学的な雰囲気や映像美だけでなく、物語が時系列的に動いていくだけ面白くなっており、より映画として完成されている。
ただし最後はどうにも途中で途切れた印象が強い。いくつもの謎が残され(それはそれでもいいのだが)、少女の体調と心の問題も残されたままに唐突に物語は終了してしまう。本当は南に行っていろいろなことが起きる脚本があったらしいという噂もあり、この中途半端な終わり方の理由に納得するが、同時にこのあたりは実に惜しいところだった。それがなければもっと得点をつけられた。
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