黒いジャガー アフリカ作戦のレビュー・感想・評価
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横道に逸れても目的達成
「黒いジャガー」の三作目。アフリカの黒人をフランスに密輸するマフィアの奴隷売買を探るため、自ら奴隷に紛れ込んで黒幕を暴く仕事に活躍するシャフト。ジェームズボンドの黒人版を狙ったコンセプトだろうが、アクション映画としては未消化。棒術シーンも今一盛り上がらず。監督ジョン・ギラーミンはこの後「タワーリング・インフェルノ」で才覚を発揮する。
シリーズ3作目、監督交代でパワーアップ
第2作とは段違いに面白い
単に連続してヒットしたから、次作はパーッと海外ロケでも行こうぜ!程度のスカスカ作品と思って全く期待せずに見たが実に面白い
クレジットを見ると前2作の新人監督ゴードンパークスから交代して、一流監督ジョン・ギラーミンになっていた。こうも変わるものか
確かに海外ロケはフランスとエチオピアの2ヶ所で敢行して、現地の役者もいろいろ使っているようだ
娯楽作品として十分楽しめるが、本作はそれにとどまらず単なるブラックプロイテーションムービーを超えて政治的メッセージ性すら発しているところに注目したい
内容は2018年の現代に於いても、さらに前代的テーマだ
2018ワールドカップでフランスが優勝した
なぜフランスにあんなに黒人がいるのか?
その答えは1972年の本作に描かれている
本作では主人公の活躍で現代版奴隷貿易の一組織は壊滅したが
全く本質的構造はいまも変わっていない
より大規模に巧妙になっているのだ
70年代初頭から中盤までアメリカの黒人運動はアフリカとの連帯、憧れ・回帰を標榜していた
肌の色が同じ、ルーツが同じといった感傷的なものなのかと思っていたが本作の前半で納得した
黒人による黒人の国家がアフリカにはある
アフリカ大陸の黒人のエリートはそのまま黒人国家のエリートなのだ
そこが米国における黒人達とは違うことを映画の中で画として見せてくれた
単に黒人のヒーローが悪い白人たちをブチのめしてスカッとする娯楽映画を飛び越えて、現在の移民=現代の奴隷貿易であり、その構造を破壊して先進国の黒人搾取をやめさせ、黒人が誇りを持てる国家を黒人自身で建設する
そのために先進国アメリカで生きる黒人が発展途上国のアフリカの黒人達を手助けしよう
これが本作のテーマだ。単なる娯楽映画ではない
ドキュメント映画ソウル・パワーで描かれる、74年ザイールでのJ.ブラウンをはじめとする米国黒人アーティスト達による現地ライブも同様の文脈で行われたものだ
しかし70年代後半になるとこの主張も急速に下火を迎える
何故なら現実のアフリカ黒人達は本当に発展途上国の人々で文明的ではなかったからだ
アメリカの黒人達は自分たちは文明国に生まれ育っており、彼らと肌の色が同じだから、ルーツが同じだからでは連帯できない
そんな甘い物ではないことを思い知ったからだ
故に黒人映画は、米国に於ける自分達の歴史に目を向ける方向に向かっていくのだ
本作では黒人主人公と白人の女性との性交シーンがある
おそらく本作公開の5年前なら大問題になって、特に南部では公開禁止とかになってもおかしくない
いずれにせよ72年でも時代は大きく変わっていたのだ
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