騎兵隊のレビュー・感想・評価
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南北戦争の光と影にある人間ドラマを表現したフォード監督とジョン・ウェイン
巨匠ジョン・フォードが代表作「駅馬車」から丁度20年後に制作した、南北戦争を扱った監督65歳の時の西部劇。後期の名作「捜索者」と「リバティ・バランスを射った男」の間に位置して、西部劇三部作の「アパッチ砦」「黄色いリボン」「リオ・グランデの砦」と比較しても力感溢れる活劇の醍醐味は薄く、フォード映画として取り上げられることは余り無い。同時期ではイギリスで撮影された警察内部の喜劇「ギデオン」と犯罪推理のサスペンスタッチの「バファロー大隊」が、フォード監督の多才さを窺わせる佳作として特筆すべきですが、この映画にはフォード監督らしい演出の鋭さは無く、緊張感のある西部劇と言うより、ゆったりしたタッチで人間ドラマを描いています。そのせいか15歳の時に淀川さんの日曜洋画劇場で観た記憶はあるものの、50年振りに見直して印象に残っていたシーンもありませんでした。でも今回面白く観たのは、この脚本を選択したフォード監督の戦争に対する価値観に想いが及んで、少なからずフォード監督の映画作りの神髄に触れることが出来ました。 それは覇権争いの国家間の戦争は勿論、国内の価値観の相違を言論ではなく暴力で解決しようとする人間の愚かさが伝わってくる脚本の着眼点に、フォード監督の映画化の関心が刺激されたと想像しました。一般的に西部劇の巨人として有名でも、初期のサイレント西部劇から1930年代頃までは郷愁作家の側面が大きく、「男の敵」「わが谷は緑なりき」「静かなる男」などで祖国アイルランド(「わが谷は緑なりき」はウェールズ)への愛着を募らせた監督自身の家庭劇とヒューマニズムの拘りが、フォード映画の本質です。時代と映画興行から、第二次世界大戦や朝鮮戦争の記録映画を依頼されたことと娯楽映画として西部劇を量産した経歴が、戦わざるを得ない人間の苦悩を直視しました。それ故時にタカ派として見られるのも仕方ないのかも知れません。この映画ではビックスバーグ作戦隊長のジョン・マーロー大佐と対立するふたりの登場人物、一人は軍医のヘンリー・ケンドール少佐ともう一人の南部の女性農場主ハンナ・ハンターが戦争による犠牲者の代弁者となり主人公を苦しめます。勝つためには犠牲が付きものだと、無理な進軍を果敢に遂行しようとするマーロー大佐の心理変化に重きを置いた脚本でした。 南北戦争(1961年~1965年)の戦況が一進一退の1863年当時の医学がどれ程のものであったかは、ケンドール少佐が足の負傷に木のコケを使うシーンで分かります。緑カビで治療するネイティブアメリカンの生活の知恵の説明に、呆れたように反応するマーロー大佐。ペニシリンが発見される60年以上も前です。その前の南軍の補給基地を兼ねるニュートン駅での戦いで負傷した兵士を治療する場面が、この映画の内容を象徴しています。敵味方平等とまではいかないまでも、そこでは北軍の若い兵士が故郷の母を想いながら亡くなっていき、敵将校を必死に救おうとするケンドール少佐の献身があります。このシーンと交互に描かれるのが、線路を破壊しレールを火あぶりして曲げ使い物にならないようにするシーンです。このカットバックこそ、フォード監督が描きたかったことではないかと思われました。人的犠牲とそれまで築いてきた文明破壊の戦争の罪深さ。また連隊には元政治家で年長者の大佐が同行して、マーロー大佐の強硬な作戦に反対しながら、いざ成功すると戦争後の身の振りを語るのです。戦争を自分が出世するための手段としか考えない不届き者です。結果的にその手助けをすることになるであろうマーロー大佐の虚しさを思えば、生死を賭けた戦いに専心する隊長の誇りを侮辱するものでしょう。そして、最後は窮地に追い詰められた南軍の兵力の実態が描かれます。統一された軍服を身に付けた北軍に対して、それまでも南軍の兵士は幅広い年齢の寄せ集めで皆私服のような出で立ちでした。そこでマーロー大佐率いる連隊の進軍を足止めさせるだけに、16歳以下の士官学校の、老齢の牧師兼校長含め、おたふく風邪2名を除いた幼い候補生たちが駆り出されるのです。流石のマーロー大佐も撤退を余儀なくされます。フォード監督はこのシークエンスを深刻には描かずユーモア溢れる演出で纏めましたが、実際の戦場を想像すると背筋が寒くなる場面です。 戦争を勝利で早く終わらすために戦うマーロー大佐の心の葛藤をジョン・ウェインが見事に演じています。軍医役のウィリアム・ホールデンはフォード作品唯一の出演で、スターの貫禄でケンドール少佐を演じ切っていました。ウェインより10歳若いホールデンは、実年齢より成熟した印象を与え、対等に対峙しています。密告防止の捕虜となる南部女性ハンナ・ハンターのコンスタンス・タワーズは、「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーの情熱に遠く及ばないものの、ふたりのスターと並び存在感は充分。フォード監督好みの美しく勝気で信念の強い、それでいて情に脆い女性像を奇麗に演じています。キャスティングを調べて驚いたのは、ハンターの召使役ルーキーを演じたアリシア・ギブソンでした。黒人テニス選手として差別を受けながらもスポーツ界で活躍したレジェンドでした。フォード映画に出演した切っ掛けが分からず謎のままですが、献身的に使えるルーキーを好演しています。彼女が南部の領地を進軍中、ハンターと同じく捕虜の身で連行されていただけなのに、それを好ましく思わない白人によって殺害されてしまうシーンは、南北戦争時代の黒人差別を如実に表現しています。これもフォード監督がこの映画の中で表現したかった重要なシーンの1つと思いました。撮影は、西部劇専門と言ってよいウィリアム・H・クローシアの安定したカメラワーク。映画の迫力の点では満足できる西部劇では無いですが、脚本とフォード演出にある、戦争と差別の犠牲者に寄り添った内容に心動かされる良作でした。
南北戦争、アメリカ🇺🇸内戦の悲劇。その一部の戦闘を描いたに過ぎない...
南北戦争、アメリカ🇺🇸内戦の悲劇。その一部の戦闘を描いたに過ぎない本作だが、飽きることなく見ることができる。ジョン・ウェインとウィリアム・ホールデンのメインはもちろんヒロインもいい味出してます。 戦争の悲劇とメロドラマ的要素も。さすがに名作と言われるだけのことはあります。
真水みたい
Wジョンにホールデン君の西部劇の名作ですが、どうも毒にも薬にもならず、面白くもなくつまらなくもなく、感想のネタもありません。いうなればウルトラノーマル。どうもフォード君の映画、駅馬車とかも悪くはないけど、名作とか巨匠とか感じたことない。
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