仮面の男(1933)

解説

「人類の戦士」「シナラ」に次ぐコナンド・コールマン主演映画で、キャサリン・セシル・サーストン作の小説に基づくジョン・ハンター・ブースの舞台劇を映画化したもの。脚色には「シマロン(1931)」「満豪龍騎隊」のハワード・エスタブルックが当たり、「地下の雷鳴」のリチャード・ウォーレスが監督した。撮影は「カンターの闘牛師」「劇場王ブラウン」のグレッグ・トーランドの担任。助演者は「暴君ネロ(1932)」「地下特急」のエリッサ・ランディ、「悪魔と深海」「借りた人生」のジュリエット・コンプトン、ハリウェル・ホッブス、デヴィッド・トレンス、ヘレン・ジェローム・エディー等である。

1933年製作/アメリカ
原題または英題:The Masquerader

ストーリー

ジョン・チルコートは英国の旧家の嫡子で、代議士として少壮政治家として輝かしい前途に恵まれていたが、美しい妻のイーヴを嫌い、社交界の不良ジョイス夫人と公然情交を続けて、遂にイーヴと別居してしまった。チルコートは飲酒と刺激剤の溺用のために甚だしく健康を害し、神経衰弱症となっていた。おりしも英国は経済困難に直面して、失業者は巷に溢れて政府はなすところを知らなかった。チルコートの属する在野党は政府攻撃の火蓋を切ったが、その闘士としては演説の巧みなチルコートをおいては人がなかった。ところがチルコートは、酒と薬と荒淫とのために心身疲弊の極に達していたので、議場で大切な政府攻撃の最中に卒倒して演説中止の醜態を演じてしまった。酒を飲んでようやく元気を回復した彼が、自動車を返して霧のロンドンを歩いていると、彼と瓜二つの顔貌をし声までも同じな男に行き会った。それは長らく英国を去っていた政治記者のジョン・ローダーであった。チルコートとローダーは従兄弟の間柄だった。ローダーは冗談に君の身替りならいつでも勤めてやると言って、下宿の番地まで知らせて霧の中に消え去った。翌朝は午前8時から党の領袖の相談会があるから必ず参会してくれという党首フレイザーの頼みがあったが、チルコートはジョイス夫人と共に夜更かしをして、朝の10時までも床の上に酔い倒れていた。チルコート家に先々代から勤めている執事のブロックはチルコートの常軌を逸した振る舞いが昂進するのを心配して、パリに滞在中のイーヴ夫人に帰邸してくれと電話で懇願したので、その朝にはイーヴは早朝の連絡機で飛んで帰って来た。フレイザーが怒って訪ねて来たのを、チルコートは午後の演説は引き受けると言って追い返した。イーヴはいろいろと双方をなだめたが、ジョイスに心を奪われているチルコートは妻の優しい心尽くしを却って荒々しく退けるのだった。午後となっても彼の気持ちは到底議会で演説する気になれなかった。彼は卒然としてローダーに替え玉を勤めさせる気になってタクシーで出掛けた。ブロックは後をつけて行くと、チルコートは着くなり倒れてしまった。ローダーがチルコートと瓜二つなこと、チルコート家の血統を受けていることを知るブロックは、ローダーにチルコート家の名誉のために替え玉を勤めてくれと頼んだ。ローダーはかくてチルコートとして議会に政府攻撃の大演説をしてセンセーションを巻き起こした。下宿に帰ろうとするところを党首フレイザーにつかまって、ローダーはチルコートとして始めて足を踏み入れるチルコート家に帰って来なければならなかった。そこで彼は多くの友人達の祝福を受けた。彼はジョイスを冷遇し、妻のイーヴに心をひかれた。数年間別居していたくらいであるから、ローダーはイーヴを妻として愛する代役を演ずる必要はなかったが、彼はチルコートと反対にイーヴに愛を感じ、ジョイスを嫌悪する気持ちを押さえる事は出来なかった。チルコートはローダーとしてクリフォード・インのローダーの下宿に病臥していたが、容体は日毎に悪化するばかりで、ローダーはチルコートの替え玉を演じ続けなければならなかった。議会は終了してローダーのチルコートとしての公生活はひとまず一段落をつげたが、疎外されたジョイスは怪しんで腕利きの私立探偵を雇いチルコートを探査させ、遂にチルコートと名乗っているのはローダーであることを知った。彼女はフレイザー主催の舞踏会でローダーの仮面を暴こうとしたが、本物のチルコートが来合わせて、うまくローダーが席を外したためにジョイスは失敗してしまった。その夜興奮のためチルコートはローダーの下宿で死んだ。執事のブロックは死亡届けをローダーとした。そしてイーヴにすべてを打ち明けた。大演説以後のチルコート即ちローダーに愛を感じていたイーヴは第二のジョン・チルコートを夫として抱くこととなった。

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