鐘の音
解説
「五ツ児誕生」「泉」のジーン・ハーショルトが主演する映画で、新人ドン・アメチがデビューするもの。原作はジョゼフ・ロス作「ジョブ」でこれをフレデリック・コーナーとオシップ・ディモフが協力改作し、サミュエル・G・エンジェルが脚色し、「二国旗の下に」の戦争場面を監督したオットー・ブラワーと俳優でもあるグレゴリー・ラトフとが共同監督し、「二国旗の下に」に協力したシドニー・ワグナーが撮影した。助演者は「スイート・ミュージック」のアレン・ジェンキンス、「二国旗の下に」のJ・エドード・プロムバーグ、「フランダースの犬(1935)」のアン・シューメイカー等で、編曲はアクシス・アルハンゲルスキーの担当である。
1936年製作/アメリカ
原題または英題:Sins of Men
ストーリー
クリストファー・フライマンはオーストリアとイタリーの国境チロル地方にあるゼーンブルックという小さな町の教会の鐘楼守りであった。彼にはカールとガブリエルという2人の子供があった。カールは幼少の時から数学と製図が好きで、将来は大飛行家になるという夢を持っていた。が、クリストファーは2人の子供は自分の技を継がせ教会の音楽家にするつもりだったが、カールはこの通りだし、ガブリエルは生まれた時から耳が悪く聾唖者で、町の医者からは不治の病として絶望視されていた。カールは父と衝突し、手紙を残してアメリカへ渡った。数年の後彼はアメリカで飛行家として成功していた。その頃ガブリエルの耳は治る見込みのあることが分かった。しかしそのためにはニューヨークか伯林へ行かねばならぬ。貧しいクリストファーには到底出来そうもないことだったが、カールは父に金を送った。クリストファーは単身米国に渡り、何年ぶりかで立派に成人した息子に会った。だがその喜びも束の間で、カールはガブリエルの治療費を得るため、無理な飛行をして墜死した。頼みの綱を断ち切られたクリストファーが涙を押さえて故国へ帰ろうとした時、欧州を覆っていた暗雲は世界大戦となり、彼の故郷ゼーンブルックは真っ先に砲火の洗礼を被ってガブリエルやその他の家族の戦死が報ぜられた。クリストファーはこうして故国に帰る途も絶えてしまい、その後20年、年老いた彼は親切なクラスティーに慰められながら、ニューヨークのどん底生活に喘いでいた。ある日彼は故郷の教会の鐘の音がレコードに吹き込まれているのを知った。作曲者はイタリア人マリオ・シンガレリだった。間もなく渡米したシンガレリにクリストファーはゼーンブルックの事を知りたさに合った。そしてこの有名な作曲家が戦争で死んだと思っていたガブリエルだった。彼は戦争の砲声で耳が治り、イタリア兵に助けられたのである。やがて交響楽団の一員としてマリオの指揮の下に嬉し気に鐘の音を奏するクリストファーの姿が見られた。