海行かば(1930)
解説
アルバート・リチャード・ウェチェン原作の小説を映画化したもので「藪睨みの世界」「ビッグ・パレイド」の原作者ローレンス・ストーリングスとW・L・リヴァー、チャールズ・マッカーサーの3人が脚色し台詞を付し「鴛鴦の舞」のサム・ウッドが監督した作品である。主演者は「生ける屍」「赤熱の抱擁」のジョン・ギルバートで、「ビッグ・ハウス」「支那街の夜」のウォーレス・ビアリー、「ビッグ・ハウス」「世界の与太者」のリーラ・ハイアムス、「人世の乞食」の原作者ジム・タリー、ポリー・モーラン、ドリス・ロイドその他が助演、カメラは「有頂天時代(1930)」「生ける屍」のパーシー・ヒルバーンが担任している。
1930年製作/アメリカ
原題または英題:Way for a Sailor
ストーリー
ジャック・トリポット、ジンジャーの3人は互いに気の合った船乗り仲間で、場所と理由とを問わず、互いに友のためには喧嘩もとわず、馬鹿騒ぎも喜んでする仲であった。従って酒も女も3人の間では平等であった。ジャックは汽船会社の女事務員をしているジョーンの愛をかち得ようとして彼女に接近していたが、船乗りを嫌う彼女はジャックを相手にしない。自分が非常に真剣で、かつ真面目であることを彼女に信じさせようと、ある日、彼は仲間を欺いて金を集めその金で服装ひと揃いを買い求め船乗り生活をやめたごとくに見せかけて彼女に求婚した。だが船に帰らねばならぬ身の彼は、婚約の破れるを恐れ結婚するまで真実を彼女に打ち明けなかった。結婚して後、初めてこれを知ったジョーンはジャックが己の野心を満足せしめる手段として自分を妻にしたのだと誤解し、彼女は憤慨のあまりジャックを振り捨て、モントリオール行きの客船に乗り込む。ジョーンによって初めて愛というものの真価を悟り得たジャックは自分の乗っていた貨物船を捨ててジョーンの乗る船に一船員として雇われる。船中で彼はたびたび彼女に会い、その機嫌をとったが彼女の怒りは依然として解けそうになかった。しかるにその航海中船は暴風雨に見舞われた。おりから、偶然この客船の近くにジャックが昔乗り込んでいた貨物船も航行していた。そして客船にこの貨物船から遭難救助を乞う信号が伝えられた。だが大荒れの海上における救助方法としてはボートによって難破船まで決死的に近づくよりほかにはない。そこで、客船では救難決死隊が組織されることになる。ジョーンの愛を再び元に戻す望みはないと考えたジャックは率先してこの任にあたるべく志願した。かくてジャックのかつての同僚であった貨物船の船乗り達は救助されたが、任務を果たしえた直後ジャックは激浪に飲まれこれを助けんとしたトリポットとジンジャーも行方不明となった。だが幸運にも彼らは捕鯨船の救うところとなり1年後3人リヴァプールに帰って来た。船が港に入った時ジャックは思いがけなく埠頭にジョーンの姿を見いだした。それは言うまでもなく彼に対する彼女の誤解が解けたことを説明するものであった。