「一国二制度の生み出した奇跡」エドワード・ヤンの恋愛時代 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
一国二制度の生み出した奇跡
最初の方は正直退屈で失敗したかと思った。4組8人の男女の恋愛模様というかすれ違いや新たな結び付きが描かれる。登場人物が出揃ってそれぞれの事情が明らかになってきたあたりからは俄然面白くなる。
年代からいって日本のトレンディドラマの影響は見受けられるが何というかあれをもっと昇華させたイメージ。生活感がないのは同じだが日本のトレンディドラマが描ききれませんでした、気配りが足りませんでした、といった言い訳満載なのに対し、恋愛事情に関係ないのでバッサリ切りました、といった潔さが感じられる。カッコいいレストランやカフェも出てくるが書き割りみたい。
つまり極めて演劇的なのである。肉体性も薄く(ベッドシーンも一箇所だけ)ドロドロした部分はなく何か形而上的に全員が恋愛の成就をトロフィーとして競っているようにすらみえる。
だからシェークスピアの喜劇「から騒ぎ」「ウインザーの陽気な女房たち」なんかに近い作劇センスを感じた。バーディーとかモーリーとか英米名でファーストネームを呼び合ってるとこからの連想もあるけど。監督もエドワードだしね。
1994年というと一国二制度が奇跡的なバランスを保っていた時代。政治の安定と経済の発展は個人の希望と野心を生み出し文化の成熟につながる。この時代の台北ではこんな知的な恋愛喜劇がつくれたんだなとしみじみ思う。
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