劇場公開日 2013年11月1日

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「声にならない声に、姿で応えた男。」42 世界を変えた男 植田仁さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0声にならない声に、姿で応えた男。

2025年5月6日
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映画『42〜世界を変えた男〜』

「目の前の“理不尽”にどう立ち向かうか。」

そんな問いに、ここまで真っ向から向き合い、闘い抜いた人がいただろうか。
映画『42〜世界を変えた男〜』は、メジャーリーグ初の黒人選手として歴史を塗り替えたジャッキー・ロビンソンの実話を描いた作品だ。

僕がこの映画に胸を熱くさせられたのは、彼が成し遂げた「記録」ではない。
どれだけ罵声を浴びせられようと、卵を投げられようと、チームメイトに無視されようと――一切、やり返さず、ただ“実力”で黙らせていった彼の姿勢、その「信念を貫く生き方」に心を打たれたからだ。

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正しさは、いつだって孤独から始まる

1947年、アメリカでは黒人が白人と同じ球場でプレーすること自体が“ありえない”時代だった。そんな中、ブルックリン・ドジャースのゼネラルマネージャー、ブランチ・リッキーが、黒人リーグからジャッキー・ロビンソンをスカウトする。肌の色ではなく“実力”で選んだ、たった一人の男を。

ここから始まるのは、美談なんかじゃない。

ジャッキーは、あらゆる角度から「潰されそうになる」。
記者から、観客から、相手チームから、時には味方の選手からも「黒人なんか野球をやるな」という目にさらされ続ける。
でも、彼は言い返さない。暴れない。言葉ではなく、プレーで証明していく。

「やり返したら、そっちが負けだ」

そう言い聞かせるブランチの言葉が、彼の胸に突き刺さる。
そう、これは“闘わないことで闘う”物語なのだ。

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信念を貫き、成果で黙らせる

この映画を観て、僕はふと自分の会社員時代を思い出した。
新しいことをやろうとすると、必ず反発が起きる。
周りに「できるわけがない」「それは無理だ」と言われる。
でも、そこで感情的にやり返しても、何も変わらない。むしろ、「ほら見たことか」と言われて終わる。

ジャッキーがすごいのは、感情に飲まれそうな瞬間でも、「目的」を見失わなかったことだ。
目の前の一人に勝つんじゃない。
“未来の無数の誰か”のために、この一歩を踏みしめる。
それを理解していたからこそ、耐えて、走って、打ち続けられた。

その結果、ジャッキーはチームに欠かせない戦力となり、ドジャースはワールドシリーズ進出を果たす。そして、アメリカ全土に「黒人でもメジャーリーグで通用する」という事実を突きつけた。

彼は、言葉じゃなく「成果」で世界を変えたのだ。

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声高に叫ばずとも、背中が語る

僕はこの映画を観終わったあと、「自分もまだまだやれるな」と背筋が伸びた。
熱さや正しさを前面に出すことも、時には必要だ。
でも、もっと大切なのは、「結果で示すこと」「生き様で語ること」なんじゃないかと。

人から否定されることを恐れて、自分の信じる道を曲げるのは簡単だ。
でも、それでは何も始まらない。
時代を動かすのは、声の大きい人じゃない。
誰よりも“静かに貫いた人”の足跡が、未来の誰かの道を照らすのだ。

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まとめ

『42〜世界を変えた男〜』は、単なるスポーツ映画ではない。
これは、「信念を持って生きるとは何か」を突きつけられる作品だ。
人と違う道を選びたいと願うすべての人に、僕はこの映画を強く勧めたい。

自分の人生を、誰かの“常識”で終わらせないために。
周りにどう言われようとも、自分の信じた道を貫いていくために。

いつだって、歴史を変えるのは「覚悟を決めた一人の人間」なのだから。

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植田仁
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