「Real(真・現実)な十倍返し。 好きが世界を変える。」42 世界を変えた男 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
Real(真・現実)な十倍返し。 好きが世界を変える。
とにかく見るべき映画です。
人間の底力を信じさせてくれる、爽快な良質の映画です。
ディズニーのファンタジーでなく史実というのが嬉しい。
差別とかは比較的あっさり書かれてます。本当はこんなものではなかったでしょう。展開も人の善の部分がクローズアップされており、ご都合主義と言えなくもない。でもだからこそ、誰にでも―子どもでも見ることができるように仕上がっています。
(差別する側の卑劣な行為は、子どもに見せたくないような気もしますが、ロビンソン氏に同化することによって、その言葉がどんなに傷つくのかを理解することができる。そして、その傷を跳ね返す方法が秀逸。自分のやるべきことをすることで、周りに自分を認めさせることができるということを体験できるかなと思います)
機内で日本語吹き替え版を鑑賞しました。
野球解らないし好きじゃないからと、感情ポルノなんだろうなと、スキップしようとしていた映画。スキップしなくてよかった。観てよかった。
アメリカ・カナダで野球映画史上最高のオープニング記録を打ち立てたそうです。 後からじわじわきます。
野球ファンなら誰でもご存じのジャッキー・ロビンソン氏を描いた映画です。まだ黒人差別が顕著だった頃にメジャーリーグに入団、その実力・態度によって周りの白人に認められていき、黒人選手(有色選手=イチローとかも)が活躍する道を切り開いた人です。
奇をてらうような演出はありません。
どんな嫌がらせを受けてもひたすら「野球をしろ、結果を残せ、そして紳士であれ」を貫き通しました。
元々キレやすい人だったのに「勝つためにここにいるんだ」「ユニフォームが着られるならそれでいい」と(多分自分に)言い聞かせ、がんばります。こんなに好きに打ち込めるんだ。
㊟映画では「元々キレやすい」と表現されていますが、実際の人物は温厚だったとか。否、それって、当時の差別の中で慣らされて怒ることを忘れさせられていただけじゃないか、それだけ差別が浸透していたのでは?とは、私の邪推。
リッチー氏によって見いだされ、差別の渦中に放り込まれる。リッチー氏の英断がなければ実現しなかった偉業。
でも、そのリッチー氏の期待に、忍耐に次ぐ忍耐で、応えていったロビンソン氏。どんなに、才能あふれて、成績を残したとて、もしロビンソン氏がキレまくって暴力事件等を起こしていたら、人々の共感は得られなかった。才能よりも何よりも、その精神力に驚嘆し、敬意を捧げます。
そして、そのロビンソン氏を支える人々の輪が少しずつ増えていく。
この映画がオープニング記録を打ち立てる、それだけでもどれだけジャッキー・ロビンソン氏が人々から敬愛されているかを示しているのだと思います。
盗塁、ヒットやホームランを打つ場面では声をあげそうになりました。
打席に立った時に頭めがけてボールを投げられる、そんなことが続いても、出塁したチャンスを盗塁という形で活かしてお返しをする。そんな切り替えの強さ、撃たれ強さ、見習いたいです。
それでもやっぱり落ち込む、そんな時にサポーターから言われた言葉「白人の子どもが君のまねをしている」。子どもはいつでも良いものを見抜く力を持っているんですね。
真の十倍返しってこういうのを言うのですね。でも言うは易く行うは難し。ジャッキーの偉大さと本当に野球が好きだったんだなとしみじみとくる。
出る杭撃たれた、そんな気分になった時、野球ファンでなくとも思い出したい映画です。
追記:
主演のボーズマン氏。伸びやかな演技。これからを楽しみにしていたのに。もっと観ていたかった。惜しいです。合掌。