劇場公開日 2013年3月9日

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「生活音」愛、アムール wutangさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5生活音

2023年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

10年ぶりに鑑賞。陰鬱で重苦しい映画だと思って見たが、不思議とあまり暗くさせられず、10年前とはまるで違った感想を持った。

10年前に見た時は、この旦那さんが介護ストレスでどんどんヤバくなっていって、最終的に「耐えきれずに」シャットダウンしてしまったように捉えたのだが、今回鑑賞した感想としてはこの「外界から見ればヤバくなっていっている」姿に強力な整合性が持たされていて、彼が発狂したわけではないとハッキリ描かれているように見えた。
これは見る人や年齢や経験値によって捉え方だいぶ変わるのかも知れないが、今回の私の感想は、旦那さんが最後まで愛を貫いた物語だというもの。そしてここで語られる愛は、根本的に2人の間にのみ存在するものであって、外側からの見え方とは大きくギャップするものだということ。

そういった温かな印象を作った要因を考えると、まず配色が思い当たった。
家の中の色がとかく常に美しくて、光の射し方にかなりこだわりを感じた。あれのおかげがあって陰鬱な気持ちが和らいだ。

また、ラスト近くでキッチンから生活音が聞こえてくるシーンがあまりに感動的だった。こういう「幻を見ちゃう」みたいな演出は本来かなり嫌いなのだが、この演出はあまりに見事だった。

序盤で奥さんが出しっぱなしの水を止めたのをきっかけに、生活音はどんどん無くなっていき、それを演出するためかBGMまでまるで無いシーンが長く続く。たまに聞こえるのは自分達の心情を理解しない娘さんの怒鳴り声。そこで引っ張りに引っ張った分、ラスト近くで幻聴した生活音が凄まじく美しい音に聞こえる。こんなに地味で美しいスペクタクルがあるだろうか。

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wutang