「1回観ただけでは掴みきれない」永遠の0 TOCYN2さんの映画レビュー(感想・評価)
1回観ただけでは掴みきれない
元旦の夜に観に行きました。地方なので映画館の席が満席になることってほとんどないのですが、8割がた埋まっていました。
中高生と両親という組み合わせが結構多かったです。
カップルで行くには少し重い映画です。受け止めるだけの器ができていないと、思いの共有は難しいと思います。
簡単でいいから、真珠湾、ミッドウェー、ラバウル、サイパン、フィリピン、沖縄、特攻について知識を入れていかないと、混乱して理解できないかもしれません。映画が表現していることが何を伝えたいのか。
この時代、KAのために死ぬと言葉を残した人がいました。
主人公は家族のために死ねないと言っていたのに。
主人公は死ぬことを選んでしまっています。本当のところ表面的には理解できたつもりですが、核心は理解できていません。
特攻を選んだ理由は、単純には解釈したくないと思いました。フィクションではあるけれど、まじめに観る価値はあります。
スポンサーなどの関係で変更されてしまったシーンがありそこは残念でした。新聞が国民をあおりたて戦争への道へ進んでしまった。これが必要だったのではないかと思います。それが若者の合コンシーンに・・・。
さらにショックだったのは、赤城の乗員の油断しきった様子。敵機に囲まれているのに護衛がいるからと言ってはしゃいでいる。当時を知らないので何とも言えませんが、どうだったのでしょう?
沖縄戦では、米軍機が本当に雨のように降ってくる表現。生きのっこった人の証言を表現すると、こういうことかと納得。自分なら生きることをあきらめてしまう戦場だと感じました。隠れる場所がない。VFXの発達のおかげで当時の証言をリアルに表現できてきていることも感じます。
制約を受けてない表現を確認したい人は原作や漫画がお勧めです。自分のリズムで読み進めることができるので。密度も濃いです。
桑田さんの歌の歌詞を聴いて、映像が頭の中で再現され泣きそうになりました。そういうことかと。
戦争を知っていたつもりだったのですが、ガツンとやられました。この映画を戦争の讃美だという人はちょっと感覚が違うのでは。たぶん、守るべき家族を持った人ならこの映画を理解できるのではないでしょうか。祖父の戦場でも地雷をしょって戦車に突っ込む順番は、残される家族の有無で決まっていたとのこと。宮部のように口に出す人はそうはいないとしても、家族を思う同じ心の人はいたと信じたいです。-0.5点は伝えたいことを表現しきれていないだろうということで。