劇場公開日 2013年12月21日

「何処までも澄んだ青空の様な宮部の瞳に感動する」永遠の0 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何処までも澄んだ青空の様な宮部の瞳に感動する

2013年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

知的

映画のシナリオ的にみて、手放しで良い作品と大絶賛は出来ない。しかし、この作品は
第二次世界大戦当時の、あの時代を生き抜いて来た人々や、無念の戦死を遂げられた人々の出来事を、あくまでも個人の視点で捉えて描いている点が素晴らしい特徴だ。
それだからこそ、この作品を観終わった後は、爽やかなあの青い空のような爽快感が胸に残るのだ。

ところで一般的には、戦争がテーマの作品では、右寄りか、左よりかの問題が出て来て、戦争を美化するか、戦争の悲劇をしっかりと描いているか、そのどちらの視点で映画が出来ているか否かで作品の評価が割れる事もある。
しかし、私は本来、映画とは芸術の領域なのでニュートラルな立場の存在で有り、映画が描いている時代の出来事その物には、明確なジャッジをしない、観客の判断に任せる、引導はあくまでも観客の手中に有ると言う描き方の映画こそが、真っ当な映画だと私は、個人的には信じている。

その点に於いて本作は宮部久蔵と言う凄腕のゼロ戦パイロットの個人的な物語として描ききっている点が本当に素晴らしい。
そして彼が何故、家族を守る事を第一に考え、そして自己の命に執着をしたのかが、丁寧に明かされていくプロセスが良い。
そしてこの宮部久蔵の生きていた時代の彼の生き様を調べて行くのが、現代の若者で、戦争などに全く興味を示さない健太郎と言う、宮部の孫息子だ。
その彼を演じているのが、三浦春馬であり、映画全体をナビゲートして行く点が本作の見所で良い点だ。

そして、健太郎自身が今迄全く戦争問題は自分の生活とは別物と考えていた事が、より物語全体をリアルな物にしている。彼は興味を示すどころか、意識すらした事が無い遠い昔の戦争を自分のルーツとして捉えて生きて行くように変化する。
健太郎が、自分の会った事が無かった祖父のルーツを知る過程で、自己の生き方を探し出す健太郎の成長の青春ドラマで有り、同時に、健太郎の祖父の宮部久蔵と言う若い命を家族の為に守ろうと生き抜いた、宮部の青春ドラマでもある、本作はこの違う時代をそれぞれに生きる2人の男の青春ドラマであると同時に、若い人々の心の成長を描いた、ヒューマン映画として描いている点が、本作の素晴らしい点なのだ。

そして宮部の戦友の今を演じている、山本学、橋爪功、夏八木勲が素晴らしい。そして健太郎の母を演じている風吹ジュンが良い。
しかし、ラストカットは無くても良かったと思うけれどね・・・それまでの感動が興ざめするからさ、春馬君が頑張っているけど、あれは頂けないカットだった。
ゼロ戦に搭乗し、死んで逝った宮部を始めとして、多くの日本人の犠牲を経て、その後現在のような、平和ボケとまで揶揄される程に、幸せで、平和な暮らしが出来る時代に生きている自分を、改めて幸せな事だとつくづくと想い入る。
もしも戦争中に生れたなら、こんなレビューを呑気に書く事の自由は許されない。
人は生れる国も、時代も自分では選択出来ないのだ。むやみに戦争当時を生きた人を簡単に批判するのはナンセンスだ。そして今、この時代に、この日本に生れ生きている事を世界レベルで考えるなら、奇跡の様に幸運な事だと深く感謝したい。

世界の国々に目を見渡せば、貧困や、独裁政治や、階級性に苦しむなど、諸問題の山ばかりである。
今の日本に暮せる事、そして愛する家族に恵まれているこの幸運を改めて、この映画を通じて再認識出来た事を感謝したい!
特攻隊は、今現在言うところの自爆テロではないし、違うものだ。しかし宮部が家族の為に生きる選択を貫こうとした事も、お国の為に、自己が犠牲となり死を覚悟した兵士も、家族を守り、国家を守ろうと、死んでいった人々も究極的には、同根の想いだと私は想う。
目指す山は同じでも、其処へと向かう道筋が違っていただけなのだと考える。

江戸時代に鎖国をして栄えた日本文化を、開国と同時に日本を植民地にするべく狙っていた諸国があるのも事実だろう。
ここに世界の中の日本の運命と悲劇がある。
大国相手に日清日露戦争、そして第二次世界大戦をしなくてはならなかった日本の悲劇も存在するのだと思う。
さもなければ、今頃、何処かの国の植民地となっていたかもしれない。恐い事だ。
動画でこの映画の紹介もアップしていますので、良かったら参考にして下さいね。

ryuu topiann