「淡々」コズモポリス 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
淡々
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「痛みへの渇望」が主眼の本作、クローネンバーグであればもっと楽しく出来たはず、なんだか淡々とし過ぎちゃったねえと、最初観た時は思ったけど…。
この間、テレビでやっていて再見。こういうのあんまり大袈裟にやられても恥ずかしいし、この位の淡さでちょうど良かったのかも…と逆に思った。
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サイバーでインターネッツな世界に身を置く銀行マンのお坊ちゃま。
成功も転落も数字でしか表せない。
言葉とデータが氾濫し、そこに埋もれていく主人公。
食べたり性交したり排泄したりしても(そういうシーンが割と出てくる)、今ひとつ生きてる実感がしない。
お坊ちゃまが「オレ生きてる!」を実感するために、「生」の極北、「死…痛み」を求める、ぶらり旅。
焼身自殺の人をウットリ眺めたり、パイ投げの人にむかついたり(そんなオタメゴカシでなく、オレをちゃんと痛めつけて!)、痛みを妨げるガードマンを排除してみたり、お坊ちゃまの行動は「痛み」を求めるが故のもの。
「痛み」のギリギリを覗くことで、己の境界を確認しようとする。
ラスト、自分のことを本当に痛めつけてくれそうなポール・ジアマッティの出現に、うっすらウットリするお坊ちゃま。
「痛みへの渇望」「存在の境界」っていう、新しくも古くもないけど変態っちゃあ変態のテーマを、ことさら変態ぶることなく淡々と進めるクローネンバーグに萌えな一本。
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追記1:「痛み」ということでは、クローネンバーグ『クラッシュ』の方が、やっぱり面白かったかなあとも思う。
追記2:お坊ちゃまと車は、ジットリ撮ってるくせに、女優陣の撮り方はクール。特にサラガドンは作り物めいている。そういうゲイゲイしいところも楽しい。
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