劇場公開日 2013年9月20日

  • 予告編を見る

「この映画はラストシーンを観る為に存在する!このラストに救われるのだ!」エリジウム Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この映画はラストシーンを観る為に存在する!このラストに救われるのだ!

2013年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

幸せ

私は個人的には、こう言う作品は苦手な部類の映画なのだ。
何故かと言えば、理由はシンプルで、アクション映画と言えば、そう呼べない事もないのだが、本作ではマット・デイモン演じるマックスの挌闘シーンの連続が、観ていて気持ちが良くないからなのだ。挌闘シーンと呼ぶよりは、トーチャーリングの連続と言った方が良いので、観ているとマックスが受ける身体の痛みの連続が、次第に観客である私の心の痛みとして感じられてきて、どうにも胸が苦しくなる。マックスだけの身体や心の痛みの問題では済まされず、どうにも観ている私の居心地が悪く、苦しいのだ。

「第9地区」で魅せてくれた、ニール・ブロムカンプ監督のSFの世界感は、それまでに描いて来たステレオタイプのアメリカ映画とは異なり、地球人類の敵としての、エイリアンの来襲ではなくて、異星人と未来都市に暮す地球人類との、友情を描いて行くと言うもので、彼は「第9地区」を通して、現在の先進国社会が抱えている、人種差別や、その他のあらゆる負のエネルギーに端を発した、人類全体が抱える、差別の根源を間接的に風刺した作品だった。
誰もが今迄描く事の無い、その彼の不思議な世界観に圧倒させられたのだった。

今回も前作同様に、彼の描く地球の未来都市の姿は、決して平和な人類の未来ではなく、LA近郊に住む人々にとって、その街は、生き地獄とも呼べる、これまで以上に進んだ貧富の2極化の世界だ。
そんな世界の底辺で、何とか真面目に生きるマックス。
持つ者達と、何も持つ事が出来ない貧しい人種達の究極の2極化の世界を皮肉たっぷりに描き出す彼の今回の作品の見所とは何か?
何だか、観ていて本当に希望が持てずに、悲しくなる。
これでもか、これでもかと不運の連続のマックス。
一方で地球を脱出して理想郷で有るコロニーの住民となった、超富裕層の人々の生活が少しずつ描かれていたが、しかし、病気を治すマシーンが、不治の世界にだけ住む事あっても、果たして本当の幸せを得る事が出来るのか?何だか虚しさだけが、漂う世界にしか見えないのだった。そして、このデラコート長官を演じていたジョディー・フォスターが更に悲壮感の塊に見えた。権力まみれのエゴに振り回されるだけの中で生きる彼らの生活に平安な日々は感じられなかった。
突っ込み処満載で、観ていて嫌気が射す程のハプニングの連続。
早く、「この映画終わらないかな?」と、希望のかけらも無い世界を観客が金を払って見せられるのは虚しいので、ラストシーンをひたすら早く観たいと只願うと、この映画のラストで思いっ切り救われた。このラストシーンは是非とも名画のラストシーンの一つに残したいと、安堵する。これまでの不快感があっと逆転し、吹っ飛ぶ名ラストシーン!思いっ切りこの映画に惚れました。是非このラストの為にも、この映画を観る価値は有ると思う。

ryuu topiann