「なぜ交換日記なのか勢いのあるエピソードをぶつけて欲しかったです。」ボクたちの交換日記 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ交換日記なのか勢いのあるエピソードをぶつけて欲しかったです。
同じ漫才映画としては品川ヒロシ監督の『漫才ギャング』に比べて勢いが平凡。漫才映画なのに、あまり笑わせてくれないのです。参加者もまばらな試写会場では余計に強く感じます。致命的なのは、なぜ交換日記をしなければならないのか、あまり日の必要性を感じさせてくれません。現代ならばメールで済ませるものを、なんでわざわざ交換日記につけなければならないのか。劇中の田中がノートに明確に拒否のコメントをつけるのがたいていの人の予想されるリアクションだけに、それを覆すだけの勢いのあるエピソードをぶつけて欲しかったです。
交換日記のネタも、最初に田中が拒絶していたところだけが笑いを取っていましたが、あとは次第に日常のやり取りに変わってしまいました。
また、コンビを解散してからの部分が、ここで終わってしまってあとは蛇足のように続いて見える点もマイナスです。人によっては、この唐突なコンビ解散が伏線となって、ラストのドンデン返しを評価する向きもあるとは思います。しかし、ラストの持っていき方が、いかにもよくあるお涙頂戴パターンになっていただけません。あの終わり方を狙うなら、映画のルックを徹底的に韓国映画のような涙腺攻撃で、これでもかというぐらい悲劇タッチにするべきでした。
テーマの「夢とは何か」という問いかけも印象が弱いと思いました。カンニング竹山ら、「夢を叶えた」芸能人らが本人役で出演して口々に、劇中の甲本にアドバイスするものの、ネタっぽい言い回しでなにが夢を叶えることなのか、いまいちよく解りません。品川ヒロシが劇中に゜訴っえたたとえ獄中からでも『人は変われる』という強烈なテーマの発信に比べて、何とも内村監督の伝え方は、パッションがなさ過ぎました。
ただ伊藤淳史と小出恵介の主役コンビは、息もぴったりで、本職の漫才師のお株を奪うほどでした。だから問題は、内村監督の何かを伝えようとする情熱。それは新人芸人が舞台に立ったとき、必死でネタをアピールしようとする姿に重なります。なんか内村監督は、本職の監督ではないだけに、映画に関われるだけですっかり満足しているような気がします。もっとハングリー精神で、新人芸人のようにがっつり映画に関わって欲しいものです。