「推理小説のような巧妙な手口で謎の死を解く」推理作家ポー 最期の5日間 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
推理小説のような巧妙な手口で謎の死を解く
結婚式を間近に控えながら奇妙な最期を迎えてしまったポー自身の死に事件性を絡めた脚本が面白い。死に際に口にした『レイノルズ』とはいったい何を意味していたのか? 事実を基調にしたフィクションが実に巧みだ。
彼と彼の死に関わった人物のディテールがよく描かれている。
ジョン・キューザックが、酒の勢いを借りてやや早口で文学への持論を吐き捨てるポーを熱演。連続猟奇殺人の犯人との消耗戦で神経をすり減らし、憔悴していくポーの姿がキューザックの顔立ちにピタリとハマる。
犯人の人物像を浮かび上がらせようとポーに協力を仰ぐエメット警視のルーク・エヴァンスもいい。作家としてのポーに敬意を払うが、暴走し始めるポーをたしなめる冷静さを持つ。善悪の判断能力に優れ捜査に妥協を許さない強い意志がエヴァンスの鋭い眼光の底に表れている。
ポーの恋人エミリーの父ハミルトン大尉にブレンダン・グリーソン、新聞社のマドックス編集長にケヴィン・マクナリーといった名優も揃え、これが単に作り話ではなく、ポーの死因にまつわる推測が現実味を出すことに成功している。
酒場で酔ったポーが客たちに問う。自分が書いた詩『“大鴉”を知っているか?』。
この作品の原題がこの“大鴉”だ。
残念ながら読んだことがないので、あらすじを調べてみたらなかなかに興味深い。
ポーが残した推理小説の数々を模倣する犯人を追い詰めるストーリーながら、“大鴉”で恋人を失い嘆き悲しむ主人公と、主人公の問に対し「二度とない」とそれ以上何も語らない大鴉との関係が物語の中心に据えられていたのだ。
コメントする