「奇跡からの副産物。」奇跡のリンゴ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡からの副産物。
リンゴ農家の苦労というのは計り知れないものがあった。
某番組で、一組のリンゴ農家さんを取り上げているのを見た時
こんなに大変で儲からない仕事をよくやっている!?と驚いた。
(阿部サダヲの台詞通りに)
例え農薬を使ったとしても、病気被害や天候の悪化ひとつで、
いたいけなリンゴ(ホントか弱い乙女なんだな)は傷ついてしまう。
それでも代々リンゴ農家として頑張っている青森県民の為にも、
自称フルーツが苦手な私、もっとリンゴを食べなきゃ!と思った。
それはさておき、
主人公の木村秋則さんのあの笑顔だ。歯無し(失礼!)満面の笑。
初めてTVで拝見した時、何てステキな笑顔の持ち主だと思った。
それが今回の作品で、なぜ彼が笑うのかが分かって涙が溢れた。
どれだけの苦しい生活に耐え、何年も実らないリンゴに絶望し、
家族全員がこの父親の暴挙(ゴメンなさい)を見守ったんだろうか。
無農薬栽培を実践・成功させた快挙の裏には、
家族や友人の援助がこんなにも長く彼を支えてきたことが分かる。
ごく普通に農薬栽培を続けていれば、奥さんの病は悪化したかも
しれないが、これほど生活には困らなかっただろう。
義父(山崎努)にしろ、子供達にしろ、両親にしろ、友人にしろ、
秋則を支える大きなリンゴの木が決して折れなかったのが奇跡だ。
リンゴ農家なのに、リンゴを一つも食べたことがない子供たちが
描く畑の絵には、実の代わりに害虫が実っていた(爆)
その害虫ですら研究材料として秋則の無農薬栽培の助けとなる。
彼が辿りついた結果(山の中で見つけた)は、
ほぼ予想通りで、私的にそりゃそうだろうな~とも思ったのだが
人間が栽培するには大変なものが、自然界では雄弁に実るという、
例えば植物以外でも、絶え間なく技術革新が進む現代において
手を加えて改良された素晴らしい製品が、レトロで機能性の少ない
骨董品に値負けしてしまう意味を垣間見たような気がする。
十何万もする多機能炊飯器で炊いたご飯が美味しいのは当たり前
だが、ガスや直火で釜で炊いたご飯は更に美味しいとか、
最近の話で面白いと思ったのが、今大流行のホームベーカリーは、
売っている材料をセットしてそのまま置いておけばパンが出来ると
いう…自分では何にもしなくていいんだよ~♪だから買いなよ!と
パン好きの友人に勧められた際に、それのどこが手作りなんだ?と
内心笑ってしまった…(決してホームベーカリー批判じゃないけど)
美味しいパンはパン屋さんで買うからいいよ。と言ってしまった。
ちなみに、友人が焼いてきてくれたパンは確かに美味しかったが。
この秋則が無農薬栽培を始めたきっかけは、そういう名目ではない。
まったく単純に、妻がかわいそうだったから。苦しんでいたから。
そこで何とか無農薬でリンゴを作ることができないだろうかという、
発明・研究魂に火がついてしまった!ということであった。
あれほどバカになれるのは(ホントすいません^^;)、彼の性格としか
私には思えなかった。11年もの間、幾ら家族の理解があったとはいえ、
村では八分、生活もままならず、電気も電話も止められて…である。
普通の人間なら絶対に諦める。父親ならまず考えることだからだ。
彼の才能を如何なく発揮させたのは紛れもなくその妻であり、
父親に向かって「貧乏なら我慢できるのに…」と話すくだりでは泣いた。
菅野美穂の演技にも泣けたが、妻の心意気の方もタダモノではない。
生るべくして生った、奇跡のリンゴ。
やっと実ったのに歯がなくて食べられないだなんて何ともはや…^^;
しかし妻が望んだ最高の笑顔(人間の機能)が見られることが何よりの
木村家の技術革新における副産物である。おめでとう&ありがとう。
(こうなったらぜひ食べてみたいけど…買えないんですって、大人気で!)