「琴線に触れ、心がほっこりと暖まる作品だった!」奇跡のリンゴ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
琴線に触れ、心がほっこりと暖まる作品だった!
無農薬の、自然栽培によるリンゴの生産に初の成功を修めた木村秋則さん、そのリンゴ誕生までのサクセスストーリーを描いたこの映画。
実話に基づいた数々の失敗の連続エピソードが胸に迫る、予想外の感動映画だった。
この作品が映画化されると言うニュースを知った時、どうしてまた映画会社は直ぐに、有名人になった人の苦労話しを撮って、お涙映画にしたがるの?と思って初めは敬遠していた。
しかし、今年の冬、友人が偶然にも、この木村さんの育てた奇跡のリンゴを食べ、めちゃくちゃ美味かったと言う事を実際に聴いた。
それでは、嘘では無く、そんなに美味しい奇跡のリンゴを育てた人の話なら是非観ようとリンゴ誕生秘話映画の公開を心待ちにしていた。
作品を観ると、期待通り思いっきり笑えて、少し泣けて、そして元気がモリモリ出た!
最初、木村さんを阿部サダヲが演じるの?ちょっとミスキャスじゃない?と思っていた。阿部サダヲが嫌いと言う訳ではないけれど、TVで観ていた木村さんのイメージからは、余りにも阿部の濃いキャラは、本人とかけ離れているように思えたからだ。
しかし、映画の進行と共に、物語に徐々に引き込まれ、最後には何の問題も無く、彼で良かったと素直に思える作品だった。
そう言えば「なくもんか」もある種、ハムカツのサクセスストーリーであり、家族の人情喜劇だった。彼の得意の当たりキャラと言えない事もない。
そして、この作品では、彼の両親を伊武雅刀と原田美枝子が演じている点も、作品を素晴らしい物に仕上げるのに、一役勝っている。
更に、結婚した妻の父を演じているのが山崎努とくれば、芝居は完璧である。
木村さんは、幼少から好奇心の強いキャラらしく、どんな物でも、機械とみれば分解して、とことんそのメカニズムの答えを自分で見つけないと気が済まない性格だったようだ。
この生来のキャラクターが、奇跡のリンゴを産む彼の奇跡の人生の基盤を成している。
映画をこれから観る人に細かいエピソードの一つ一つの感想に付いては、ここで書くのは差し控える。しかし、その一つ一つの話に、心がほっこりと温まる。
人間にだけある、笑うと言う特性と言う話。そして義父征治の戦争体験話などが特に心に残った。しかし、人の人生もリンゴの成長も、皆共に自然に生かされ、大きな宇宙と言う流れの中で活かされていると言う神秘を感じさせられる作品だった。
また、木村さんの実母はまるで発明王エジソンの様な考え方の持ち主で、いつも木村さんを見守っていた。そしてその対極で、父は現実の厳しさを伝えていた。こう言う素晴らしい家庭環境で育った彼は、結婚してからも、また素晴らしい家庭を築く事が出来た。苦労を共有する事が出来る家族とは、本当に有り難い存在だと改めて再確認した映画だ。
こう言う人情味溢れる映画は予定通りの展開であるが、しかし琴線に触れる心温まる良い映画だった。人は誰もが、その夢に向かって、決して努力を惜しまずに、とことん日々努力を怠らずに励む事。正に継続は力なりだ。今ではこう言う考え方は流行らない。
何でも、スピードが要求される時代にあっては中々持ち得ない価値観だ。
結婚も、人生も忍耐こそが、幸運を呼ぶ鍵のようだ。
どんなリスクがあっても、人生は、そのリスクを乗り越える価値がそれぞれの人生には有るのだと教えられた。
閉塞感の有る、今の日本で、この映画は、希望と笑いの灯を心に灯してくれる感動の拾い物の作品だった。