劇場公開日 2013年6月21日

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「舞台を生かしきれていない」アフター・アース REXさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0舞台を生かしきれていない

2017年6月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

単純

興奮

怪物に目の前で姉を殺されトラウマを抱えた少年が、墜落した未知の星(地球)で、負傷した父を助けるべく、たった一人数々の試練を乗り越える。
ざっくり言うとこのようなストーリー。

世間や批評家からは酷評されていましたが、傑作ではないにしろ、それなりに楽しめる娯楽作だった。
シャラマン、冒頭の掴みは凄くうまい。

墜落中らしき機体、倒れている少年。

そこから、地球を離れ異星人(原住民)を駆逐して別の惑星で生存している人類のモノローグ。
次々と現れる未知の情報に、自然と前のめりになる。
対人間兵器として異星人が作ったモンスター(アーサ)が、「人間の恐怖を嗅ぎとって」襲って来るというアイデアはなかなか面白い。

「危険は確実に存在する。しかし恐怖は人間が生み出すものだ。未来に起きることを予測して恐れているだけ」
この台詞、まるでシャラマン自身が自分の作品を見る観客に対して皮肉っているかのよう。
だが、せっかく千年後の地球でのサバイバルが始まった!と期待するも、その舞台を生かしきれていないのが残念。
ウィル・スミス扮するサイファが吐く台詞「地球の動物は人間を襲うよう進化した」ことは原因も理由も明かされず、しかも動物たちが人間を意図的に襲うように細工された痕跡もなかった。ジャングルが生い茂っているのに酸素が足りないこととか、昼夜の寒暖差が激しすぎることとか、自然の摂理にだいぶ説得力が無いことも良くない。

これ、脚本の書き直しがあって宙に浮いてしまった設定なのか、「地球の動物は千年の間進化したので、人間にとって危険だ」の誤訳じゃないのか?と思ってしまう。

異性人が腹いせに、地球の動物に細工して母星に住めないようにしてしまったとか、地球人による汚染のせいで動植物が人間を排除すべきものと知性が発達したとか、裏設定か何かがあったに違いない。
もしくは、本当は地球の野性動物vs人間だけにしようと思ったのに怪物も出してしまったのか。
とにかく大風呂敷広げすぎた脚本をザクザク切り取ったような粗さ。

またモンスターも、皮を剥がされた鶏のような、どこかで見たような造形。
長い四肢、長い頭頂部。
アメリカのクリーチャーデザイナーは、【エイリアン】の呪縛から逃れられないらしい。

とはいえ、VFXは素晴らしいものだし、定点から時間を切り取ったような撮影法を使ったり、動物の視点から人間を撮ってみたり、随所にシャラマンらしさも垣間見れた。
恐怖を排除した故に感状表現が不器用な父親を好演したウィル・スミスも良かったし、アドベンチャーものとしては及第点。

ちなみに登場人物の名前が「キタイ(期待)」「センシ(戦士)」「アーサ(朝←だと思うのだが)」など、日本語の音が使われているのも楽しい。

REX