劇場公開日 2012年11月10日

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「主人公に共感出来ないのに感動的な物語」チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0主人公に共感出来ないのに感動的な物語

2018年5月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

バイオリニストのナセル・アリは、大切なバイオリンを妻に壊され自暴自棄になり自殺することにした。最後の日々を過ごす中で回想する若き日の思い出・・・切ないラブストーリーのようですが全然違います。主人公がものすごいエゴイストで家族に酷い仕打ちを強いていることに全く無自覚なので、バイオリンを壊されるのも因果応報としか思えない話。また絶望して死ぬと決めたものの思い切った自殺ができないために繰り出される笑えないギャグの連発に首をかしげているところに優雅に現れるヒロイン、イラーヌの圧倒的な美しさの前で全てが打ち消され、物語が全く反対側に振り切る。これほど主人公にさっぱり共感出来ないまま感動的に終わる映画はそうはないと思います。

舞台はテヘランですが背景はかなりお粗末な描き割り。この辺り原作と共同監督を務めるのが『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピであることを念頭に置いていないと独特のタイム感に全く乗れないかも知れません。『彼女が消えた浜辺』にも出ていたイラーヌ役のゴルシフテ・ファラハニがとにかく美しいのでこれをスクリーンで観られなかったのが悔やまれます。

よね