「無駄な部分がいっさいなくて、キッチリ計算してある理科系的な映画。ラブコメや人情喜劇ではないです。」みなさん、さようなら Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
無駄な部分がいっさいなくて、キッチリ計算してある理科系的な映画。ラブコメや人情喜劇ではないです。
団地マニアというわけではないけれど、この映画のような団地(住宅団地、マンション団地除く)に興味があるので見てみました。
原作は読んでいないので、見る前は団地を舞台にしたコメディーみたいなものを期待していましたが、実際の映画は笑うところがほとんどなくて、かなりシリアスな内容でした。
ある事件をきっかけに団地から出られなくなった主人公渡会は、一生団地の中で過ごすことを決意し、中学にも行かず、団地の商店街のケーキ屋で働き始めるのだが・・・。
「三丁目の夕日」みたいに懐かしい物事を中心とした人情話なのか?と思って見ていた部分、および舞台の団地は、すべてラストへとつながる計算されつくされた伏線でした。
その分、ラストの部分はすごい緊張感と異様な盛り上がりがあり、感動しました。
でも、こういう計算されつくされたデジタルな感じの映画も、それはそれですばらしいし、いいと思うのだけれど、期待していたものと違ったので妙な不満感があった。
ラーメンを頼んだらチャーハンが出てきて、とりあえず食べたらすごくおいしくてお腹いっぱいになったけれど、ラーメンが食べたかったみたいな感覚です。
この映画では団地が、滅びゆく昭和の遺物みたいになっていたけど、そんなに捨てたものでもないと思う。
関東圏で言うと、東京23区内、あるいはその周辺(他県含む)なら、家賃が相場より安いから、入りたい人はいくらでもいる。
少子高齢化は世間なみに進行するけれど、それなりに回転するので人口はそんなに減らない。
団地の商店街だって、東京23区及びその周辺(他県含む)では全体的に見ると、ゴチャゴチャしていて空いている土地がなく、土地や賃料が高いため大型店や競合店も少なく、意外と不便だからそれなりにやっていけるはず。
この映画の舞台、東京のはずれの町田(それも設定的には駅前ではなく、かなりはずれたところかな?)ではこうなってしまうのかもしれないけど、もう少し都心から離れていて、周辺に空いている土地があるところは、田舎の割に住んでいる人が多いから、郊外型のスーパーや専門店、飲食店などのチェーン店、病院などが進出してきて、かなり便利なところもある。
団地の中だけでは無理かもしれないけれど、団地中心に半径2キロ以内なら、一生その範囲を出ないでやっていけるかもしれない。
昭和の遺物ではなく、まだまだやっていける団地はいくらでもある。
もっと団地を肯定的にとらえたコメディーもセットで見たくなるような映画でした。