「団地の中」みなさん、さようなら kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
団地の中
最初は風変わりな男の物語だと思わせる手法で描かれる。高度成長期に作られた町田市立の巨大団地。小学校もあり、団地の中には商店街が建ち並び、団地の中でも生きていられるというニュース映像もあったりして、そんな中で引きこもり男が誕生した(笑)てな感じで。
看護婦をしながら女手ひとつで育て上げた母親(大塚寧々)の温かい視線も感じながら、その“引きこもり男”は大山倍達の記録映像を見てから空手の独習に励み、小学校の同級生たちを守るんだ!という意気込みを持って夜はパトロールという習慣ができた。中学校も行かなかったが、なぜだか卒業できた・・・不登校でありながら、なぜなんだろう?という疑問もあるが、16歳になったら団地内のケーキ屋で働くことになった。やがて隣人の同級生松島(波瑠)とファーストキス。そして同窓会を契機に初恋の相手緒方早紀(倉科)と付き合うようになり、初体験も済ませ、婚約までしてしまう。しかし4年付き合った後、早紀は外に出たいと思うようになり、団地の外に出ようとすると倒れてしまう悟であった。
その中盤に秘密が明かされる。小学生の頃、目の前で同級生が侵入してきた中学生に刺殺されてしまったのだ。そのトラウマで団地から出られなくなり、皆を守ろうという気持ちだけが強くなったのだ。やがて早紀は彼の下を去り、団地にも同級生がほとんどいなくなり、ケーキ屋の主人(ベンガル)も引退。孤独に耐えられなくなりそうな雰囲気の中、外人居住者が多くなり、その中でブラジル人少女マリアと仲良くなり、彼女が継父(田中圭)に虐待されていることを知り、彼と直接対決!そして、悟の母親も死んで、ようやく団地を去る決心を固める悟であった・・・
波瑠や倉科カナとのラブシーンが青春そのもの。うらやましくもあるが、彼女たちが団地を去っていく虚しさはずしんとくる。普通の男にも見えるが風変わりすぎて、哀しささえ感じさせるのだ。そして、殺人事件の目撃者たる彼の心の奥底までは見えなくなるのだ。彼を慕っているいじめられっ子の園田(永山)も最後にはケーキ屋を手伝うことになるが、精神異常で入院。母親の遺品である日記の内容も泣かせる。痛い青春というほどでもないのだが、色々考えさせられる内容だった。