「不思議な映画。」悪の教典 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議な映画。
「悪の教典」見ました。
初見は劇場公開初日でしたが、その衝撃が忘れられずに何回もリピートしてます。劇場鑑賞時はたまたまレディスデイの夕方で、場内に女子高生が多かった。そして主人公が殺戮を重ねるウチに、隣に座っていた女子高生が泣きながら上体を屈めてしまった。この光景はかなり衝撃で、数多の残酷描写を生で見たが、ここまで観客がダメージを受けているのは初めてだ。その人の他にも泣いてる人や、目を背ける人、軽く悲鳴を挙げる人もいた。
ただ所々で笑いが起きていたのにも同時に驚き、とても不思議だった。
そんな若者を横目に、僕も目を背けた。特に終盤の学祭残酷合戦で、屋上へ続く階段でポンポンと生徒を殺していく様。過剰な三池節は覚悟していたが、ここまでとは想像の遥か上をいっていた。
ただ、その残忍な殺戮なくしてこの映画は成立していない。というのもこの映画にはたくさんの人間や場所が出てくるが、ほぼ全てが間接的な主人公視点。主人公目線のカメラワークという意味ではなくて、主人公が下す決断に対する回想のように見える。この人がこういう人でこういう性格だから、こう殺す的な。途中で警察が出てきて、釣井先生が遠回しに警告しているけど、普通ならその後に警察が少なからず動き出したりするものだ。この映画にはそれが全くなくて、いかに主人公が理想の環境を築きつつあるかを完璧に描いている。そこを単調と捉える人も多いと思うが、それは後半の合戦を良しとするか無しとするかで別れると思う。
ストーリーが単調なのは仕方がない。なぜなら主人公は周りに隙を見せないから、周りからしたらただの良い人でしかないからである。たとえ主人公に不信感を持とうものなら、その人は消されてしまうからだ。
あと感心したのは、主人公が猟銃をぶっ放した時の耳痛の反応。耳を抑えながら「あっ!あっ!」と。もちろん簡単に人を殺すからクソ野郎なのは間違いないが、その描写を見たときに何故かクソ野郎さが増した気がする。
釣井先生の演技も良かった。特に染谷君に対して、主人公の生い立ちを説明する所。なんで急に饒舌なのかは分からなかったが、自分が調べた手柄を得意げに披露する姿が滑稽だ。キモい。
いろいろ言いましたが、殺戮合戦を受け入れられるか否かで意見が真っ二つの映画だと思います。僕は、その殺戮を爽快に見ることができた。