「クリア、できない恐怖。」ネイビーシールズ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
クリア、できない恐怖。
現役隊員をメインキャストに起用し、火器兵器も全て本物。
…じゃあこれ、ドキュメンタリーじゃないの?と思ったら、
しっかりと脚本があって、一応ドラマ仕立て。
これつまり、彼らの戦闘シーンだけでは内情が不明なので
私生活も盛り込んでみた、っていうことなのだろうか。
日夜生命ギリギリのところで作戦を遂行している彼らにだって、
家族がいるし、よき父親だったりしているわけだ。
大尉と副長が冗談を交えて普通に会話をしているシーン。。
(この演技が上手いかヘタかはおいといて^^;)
出発前日に家族同士でバーベキューをして楽しむシーン。。
彼らとて、まったく普通の人間であり、仕事以外ではこんな
顔もしているんだよ…というのを見せたかったんだと思う。
この演出が、戦闘シーンと交互に挿入されるので、
いま私が観ているこの演技は本物なのか?どっちだ?なんて
いちいち考えてしまうこともあったが^^;作戦遂行中の映像は
息を飲んで身構えするほど力が入っていたので気にならず。。
地味に静かに正確に、彼らは敵を一人ずつ撃ち殺していく。
大激戦になれば負傷し、命を落とす隊員もいる。
国家の為、平和の為、と思えば辛いが、これだけの殺し合いを
見せられていると、敵も味方もワケが分からなくなってくる。
なんで人間同士が、こんなことやってるんだ!?としか思えない。
彼らの任務は正当だとしても、
当たり前のように殺し殺されていく映像をずっと観るのは過酷。
民間人がまったく犠牲になっていないわけではないのだ。
テロや戦争の事由を考えたらキリがないが、
今作では彼らの生きざまがよく描かれていたと思う。
用意周到に作戦を練り、遂行する。これで終わりかと思えば、
また次の作戦地へ赴くことがほとんど。テロの壊滅とはなんて
果てしない、(当たり前だけど)首謀者抹殺まで続くわけか…。
どこまでも続く脅威にまったく気を許せず、観ているこちら側も
まったく力を抜けない。
ミリタリーファンではないので、観るところが違うかもしれないが
リアルな戦闘とは、ハリウッド映画のズキューン!ドカン!とは
まったく違う。ドキドキハラハラはするが、爽快感なんか、ない。
人質が生きていたことが、隊員が命を落とさなかったことが、
せめてもの安堵になる。私は彼らの家族のように強くなれないな。
今作の出来がどうのということよりも、
これが現実だ。というのは観ておいた方がいいのだろうと思った。
安穏と暮らしている私などは、知っておかなきゃいけない現実だ。
(英雄になんてならなくていいから帰ってきて。そう祈ってしまう…)