「【”聖地サンティアゴへの巡礼の旅に出た男女4人の夫々の理由。”今作は、息子の遺志を継ぎ旅に出た社会的に成功した男と、偶々同行する事になった3人の男女の姿を追ったロードムービーの逸品である。】」星の旅人たち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”聖地サンティアゴへの巡礼の旅に出た男女4人の夫々の理由。”今作は、息子の遺志を継ぎ旅に出た社会的に成功した男と、偶々同行する事になった3人の男女の姿を追ったロードムービーの逸品である。】
■ある日、眼科医として成功したトム・エイブリー(マーティン・シーン)の元に巡礼の旅に出ていた息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス:マーティン・シーンの息子で、今作の監督)のもと旅に出て直ぐのがピレーネ山脈で嵐に巻き込まれて事故死したという知らせが届く。
息子の遺体を引き取りにフランスとスペインの国境の町を訪れたトムは、遺品と亡きがらを受け取り、帰国しようとするが一夜明け、地元の警察に”矢張り火葬してください。”と頼み、ナント息子のザックを担いで聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅に出あるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤、トムは笑顔無く修行僧のように巡礼の道を歩んで行く。そして、ポイントポイントでザックから息子の遺灰を撒いて行くのである。
まるで、余り交流のなかった息子の遺志を継ぐように。
■この作品が魅力的なのは、トムが道中に出会う三人の男女のキャラクターが魅力的な所である。
更に言えば、劇中で抑制したトーンで流れる”ニック・ドレイク”の超名曲”ピンク・ムーン”などの曲もとても良く、この作品に品性を齎しているのである。
1.ヨスト(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)
ダイエットが旅の理由の、それにしては道中、美味そうに肉を食い酒を飲んでいる陽気なオランダ人。
2.サラ・マリー・シンクレア(デボラ・カーラ・アンガー)
禁煙が旅の理由だが、その割にはスパスパと煙草を吸っている。他人の干渉を嫌うが、途中で旅に出た本当の理由ー暴力的な夫から娘を守れなかった事を悔いている。-をトムに話した事から彼と、巡礼の旅を共にする。
3.ジャック(ジェームズ・ネスビット)
スランプのアイルランドの作家。旅の理由は小説のネタを探す為。
という3人が、何だかんだと言いながらトムと道中を共にする様が、しみじみと良いのである。
・トムは一人で出発した直後、川にザックを流してしまい、必死に川に入ってザックを拾ったり、三人と旅する中でワインに酔っ払って彼らの悪口を言って警察に拘留されてジャックに保釈金を払って貰ったり、ジプシーの少年にザックを盗まれて4人で追いかけるも見失い失意の中にいると少年の父イズマエルが少年を連れてやって来て”息子が、私達の名誉を汚した。どうか夕食に来てください。”と言い4人が招かれると、ジプシーたちが楽しそうに歌い踊り酒を飲んでいる姿を見るのである。
そして、イズマエルはトムに”ムシーアまで行って、息子の遺灰を撒きなさい。”と告げるのである。
ー と言う数々の経験をしながら、トムも頑な心を徐々に解して行き、3人とも打ち解けて行くのである。
トムがお詫びの印に豪華なホテルの部屋を4室自腹で払い、4人がトムの部屋で楽しそうに飲むシーンは特に良い。彼らが旅を共にする中で、生きる喜び、意味を再確認しているようである。
そして、旅の随所でダニエルが現れるシーンも良いのである。(彼が警察に拘留された時には、頭を”あーあ”と言う感じで振っている。)ー
・そして、漸く4人は長い旅を終え、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着し、壮麗な寺院の儀式を見るのである。その中の僧侶の一人は笑っているダニエルなのである。
トムは最後のスタンプを押して貰った後に、巡礼の旅を成し遂げた証明書を貰うのだが係の人に、申し訳ないが”ダニエル・エイブリーと書いて下さい。”と頼むのである。
更に、ヨスト、サラ、ジャックの3人はそこで帰らずに、トムと共にムシーアの海岸まで同行するのである。
そして、一人一人新たな生きる上での言葉を呟き静に姿を消すのである。
独り残ったトムの脇にはダニエルが居り“踏破したね。”と父に語りかける中、トムは残った遺灰を全てムシーアの海に晴れ晴れとした顔で撒き、カリフォルニアには戻らずに、新たなる旅を続けるのである。
<今作は、息子の遺志を継ぎ旅に出た社会的に成功した男と偶々同行する事になった3人の男女の姿を追ったロードムービーの逸品なのである。>