ル・アーヴルの靴みがきのレビュー・感想・評価
全11件を表示
カウリスマキオールスターの共演
弱者とは、そこに手を差し伸べることとは、を描こうとした作品で、グローバル経済(自分たちの「外」に搾取する対象を置くこと)への深い絶望はベースにありながらそこを上手く消化できずにファンタジーになってしまった作品とも思えました。
決して駄作とも失敗作とも思わない、なんなら観ている間は楽しめてしまったわけですが、この次の作品で一度引退宣言も、あとになると辻褄が合うというか。
壁やフェンスの青い色のイメージの連続はこの作品を思い出すときにキーになるものですが、それはやはり温かい色ではなく、どこか断絶をイメージさせるのに対して、最愛の妻のイメージカラーは赤、温かい黄色、といったところも勿論コントロールされていて、信頼が置けるのは間違いないわけです。
しかし、きっとアキ・カウリスマキのバイオグラフィー的にはきっとグローバル社会への深い混乱期の作品ということになるのではないでしょうか。
最後に、アキ・カウリスマキ作品の常連さんたちをたくさん見れて私は幸せでした。
流れがゆったりで昭和っぽい感じがした
不法移民
愛と希望がある
観客は滑稽にも置き去りにされる。
優しさのかたち
アキ・カウリスマキ作品はこれが初めて。期待を裏切らない、独特の空気感に出会えた心地よさが残った作品となりました。
仏港町、ル・アーヴルを舞台に、靴磨きの男と不法侵入の少年。また、男の妻や彼らをとりまくご近所さん。人間同士が紡ぐ優しさのいろんな形を、押し付けるのではなく、何気なく置き、見つけ出させてくれるような、さりげない感覚。
そんな類いの善意は、一つ一つは小さくても、それが結集して力を生み、事態を好転させるのだと思いました。
そして助けられた少年も 一度は命をあきらめた妻と主人公の二人のこれからも、心憎い警部や街のご近所さん達も・・いったん物語はおしまいになりながらも、またそれぞれの新たな始まりを予感させてくれるような終わり方が(小ぶりで控えめ、でも空に向かって咲いていた桜の木が、それを象徴しているように)気持ち良かったです。
奥さんの旦那様に対する愛の強さは無表情なのに、とてもこちらに伝わってきて、この最終展開はファンタジックでもあり、ちょっと感動しました(笑)
日本の人情映画の世界
「幸福」に包まれた秀作
あらすじだけ見るとどんよりと暗い映画を想像するかもしれない。だが実際はまったく反対なのだ。
まず特筆すべきなのはこの映画が持つ「雰囲気」だろう。貧しい老人や移民問題といったリアルでシリアスな問題を描いているのに、どことなく能天気で暗い気分にならない。それがノルマンディーの風景と重なり合って、良い味を出している。現代の話なのに映像感や描き方がどことなく’60年代、’70年代を彷彿とさせる。何とも言えない不思議な空気感なのだ。
俳優達も良い。誰も彼もが一度見たら忘れられないキャラクターばかり。マルセルの見た目は決して「いい人」ではないのに、彼の行動や言動から彼が持つ優しさがあふれ出ている。仲むつまじい夫婦の様子も非常に好感が持てる。近所の店主達や靴みがきの同僚、さらには警官まで。みんな全くの「いい人」ではないが憎めない。これがこの映画を一筋縄ではいかない者にしているのだろう。そして唯一の純粋な良い子である移民の少年イングリッサ。彼とマルセルの無言のやりとりは何とも言えずおかしい。
ところどころクサイ台詞や、理想主義的な展開が鼻につく人もいるかもしれない。でもこの映画の登場人物と同じように、心からは憎めない。見終わった後は何とも言えない幸せな気分になれること間違いなしだ。
(2012年5月20日鑑賞)
もう理屈抜き。
全11件を表示