ル・アーヴルの靴みがきのレビュー・感想・評価
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カウリスマキオールスターの共演
弱者とは、そこに手を差し伸べることとは、を描こうとした作品で、グローバル経済(自分たちの「外」に搾取する対象を置くこと)への深い絶望はベースにありながらそこを上手く消化できずにファンタジーになってしまった作品とも思えました。
決して駄作とも失敗作とも思わない、なんなら観ている間は楽しめてしまったわけですが、この次の作品で一度引退宣言も、あとになると辻褄が合うというか。
壁やフェンスの青い色のイメージの連続はこの作品を思い出すときにキーになるものですが、それはやはり温かい色ではなく、どこか断絶をイメージさせるのに対して、最愛の妻のイメージカラーは赤、温かい黄色、といったところも勿論コントロールされていて、信頼が置けるのは間違いないわけです。
しかし、きっとアキ・カウリスマキのバイオグラフィー的にはきっとグローバル社会への深い混乱期の作品ということになるのではないでしょうか。
最後に、アキ・カウリスマキ作品の常連さんたちをたくさん見れて私は幸せでした。
流れがゆったりで昭和っぽい感じがした
いい人ばっかりが集まった映画。犬までいい奴で最後までいごごちが良い。
お人好しで憎めなくてお互いが理解していて素敵な町だ。
おまけに警部まで一役買っている。
善行を続けていたら不治の病も治してしまったという奇蹟まで起こすといいたかったのだろうか?(妻曰く近所では奇蹟は起こってなかったらしいが)
少年のこれから先が心配も去った後も街はおだやかな時が流れていくだろうと思わせる。
とは言っても難民をかくまって逃がしたらそれは犯罪だし、警部まで加担していた。
善行を重ねていたんじゃなくて悪行を重ねていたのだ。(見終わった後に気づく)
それを感じさせないぬくもりがこの映画にはあった。
見て損はない映画やねえ。
不法移民
2022年7月3日
映画 #ル・アーヴルの靴みがき (2011年)鑑賞
#アキ・カウリスマキ 監督がフランスで撮った作品
途中までシリアスで悲惨な結末を危惧していましたが、できすぎたハッピーエンドとなりました。個人的には悪くはないかなとおもいました。
愛と希望がある
愛がある。希望がある。優しさがある。眼が未来に向いている。
ああ、映画だなあ、と実感できる作品。
そうそう、やっぱり小津安二郎の世界観が見て取れるとね、ってところで、日本人である自分にも共感しやすい。
他方、西欧の移民問題については共感というと厳しい。
西欧とアフリカとの歴史的関係を考えると、思いやりのない世界がそこに存在しているように感じる。ボタンを掛け違えていませんか、西欧さん? と言いたくなる。
1つのヨーロッパ共同体などと悦に入っていらっしゃるが、アフリカや中東は違うのかい? と問いたくなる。
観客は滑稽にも置き去りにされる。
人々の愛に心が満たされていく中で、常につきまとう不安。
「いつ清算されるのか」と落ち着かない観客をよそに、誰もが望む、しかし1番あってはならないようなラストを迎える。
観客はただ呆然と泣き笑うだろう。
結末を恐れていた自身を一笑に付された様な気分で。
優しさのかたち
アキ・カウリスマキ作品はこれが初めて。期待を裏切らない、独特の空気感に出会えた心地よさが残った作品となりました。
仏港町、ル・アーヴルを舞台に、靴磨きの男と不法侵入の少年。また、男の妻や彼らをとりまくご近所さん。人間同士が紡ぐ優しさのいろんな形を、押し付けるのではなく、何気なく置き、見つけ出させてくれるような、さりげない感覚。
そんな類いの善意は、一つ一つは小さくても、それが結集して力を生み、事態を好転させるのだと思いました。
そして助けられた少年も 一度は命をあきらめた妻と主人公の二人のこれからも、心憎い警部や街のご近所さん達も・・いったん物語はおしまいになりながらも、またそれぞれの新たな始まりを予感させてくれるような終わり方が(小ぶりで控えめ、でも空に向かって咲いていた桜の木が、それを象徴しているように)気持ち良かったです。
奥さんの旦那様に対する愛の強さは無表情なのに、とてもこちらに伝わってきて、この最終展開はファンタジックでもあり、ちょっと感動しました(笑)
日本の人情映画の世界
北フランスの港町ル・アーヴルを舞台に、靴みがき稼業の老人とアフリカからの不法移民少年の交流を描いた、フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督作。
素朴で淡々とした作風。
カウリスマキの作品を見ると、小津安二郎の作品を感じる。
小さな小さな人の善意、周囲の人間模様に夫婦愛…。
悪人も登場しない。あの警部の描かれ方もいい。
人情の世界、日本映画の世界だ。
心温まる作品ではあるが、べったり感情には寄り添わない。
クスッと笑えるユーモアもあるが、少しビター。
じんわりしつつ、移民問題も込める。
秀作。
不法滞在の少年との交流を描いた「扉をたたく人」があったが、こちらも良作!
「幸福」に包まれた秀作
あらすじだけ見るとどんよりと暗い映画を想像するかもしれない。だが実際はまったく反対なのだ。
まず特筆すべきなのはこの映画が持つ「雰囲気」だろう。貧しい老人や移民問題といったリアルでシリアスな問題を描いているのに、どことなく能天気で暗い気分にならない。それがノルマンディーの風景と重なり合って、良い味を出している。現代の話なのに映像感や描き方がどことなく’60年代、’70年代を彷彿とさせる。何とも言えない不思議な空気感なのだ。
俳優達も良い。誰も彼もが一度見たら忘れられないキャラクターばかり。マルセルの見た目は決して「いい人」ではないのに、彼の行動や言動から彼が持つ優しさがあふれ出ている。仲むつまじい夫婦の様子も非常に好感が持てる。近所の店主達や靴みがきの同僚、さらには警官まで。みんな全くの「いい人」ではないが憎めない。これがこの映画を一筋縄ではいかない者にしているのだろう。そして唯一の純粋な良い子である移民の少年イングリッサ。彼とマルセルの無言のやりとりは何とも言えずおかしい。
ところどころクサイ台詞や、理想主義的な展開が鼻につく人もいるかもしれない。でもこの映画の登場人物と同じように、心からは憎めない。見終わった後は何とも言えない幸せな気分になれること間違いなしだ。
(2012年5月20日鑑賞)
もう理屈抜き。
観たあと旅に出たくなる映画、一杯飲りたくなる映画が好きだ。カウリスマキ監督は期待を裏切らない。スチールの連続のような絵、色調、照明、演出。しかも今回は港町でカルヴァドスだ。もう理屈抜き。★4.5 http://coco.to/4034
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